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醸造科学科 曽 厚嘉 助教が第3回日本酒シンポジウム「日本酒をもっと身近に ~米・発酵・流通から考える新たな価値創造~」に登壇

2026年7月3日

教育・学術

醸造科学科 曽 厚嘉 助教が6月12日(金)、株式会社Agnaviが主催、東京農業大学と一般社団法人AgVenture Labが後援する第3回日本酒シンポジウム「日本酒をもっと身近に ~米・発酵・流通から考える新たな価値創造~」に登壇し、日本酒を飲む際の器の違いによる官能変化について語りました。

今回で3回目の開催となる株式会社Agnaviの「日本酒シンポジウム」。この度も世田谷キャンパス 国際センターを会場に開催され、酒蔵、食品メーカー、流通事業者、金融機関、大学関係者、メディア、学生など、多様な立場の皆さま約170名が参加しました。

曽助教はシンポジウムの第3部で登場し、「容器で味は変わるのか」をテーマに日本酒の保存容器が品質や味わいに与える影響について講演しました。

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醸造科学科 曽 厚嘉 助教

参加者は実際に日本酒を試飲しながら、アルミ缶と褐色瓶で保存した日本酒の違いについて理解を深めました。

容器で味は変わるのか?

醸造科学科 曽 厚嘉 助教 講演ブリーフィング

曽助教は台湾出身で、学生時代から日本酒に魅了され現在は日本酒の研究に取り組んでいる。今回の講演では、日本酒を製造した後、容器に詰めて保存する期間にどのような変化が起こるのかを科学的な分析結果をもとに紹介した。背景にあるのは、日本酒の海外輸出拡大である。日本の伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録されたことや農林水産物・食品の輸出拡大戦略により、日本酒の海外市場は今後さらに広がることが期待されている。一方で、従来のガラス瓶には重量があること、輸送コストが高いこと、破損リスクがあること、回収や洗浄に手間がかかることなどの課題がある。これに対し、アルミ缶は軽量で耐久性が高く、リサイクル率も高いという利点がある。しかし、日本酒を瓶から缶へ切り替えた場合、「味や香りが変わるのではないか」という懸念もある。曽助教の研究は、その疑問を科学的に検証するものだ。

実験では、純米吟醸酒や純米酒を180mlのアルミ缶、または褐色瓶に充填し、日光照射や室温暗所など異なる環境で30日、または90日以上保存。その後、色、香り、酸味成分などを分析した。まず色については、日光照射下で保存した場合、アルミ缶は褐色瓶に比べて着色の進行を抑えることが確認された。日本酒の色の変化には、メラノイジン系色素やフラビン類などが関係すると考えられており、現在も原因物質の特定が進められている。香りについては、保存によりアルミ缶・褐色瓶のいずれでも吟醸香は徐々に低下した。ただし、アルミ缶では酸化や熟成に関わる成分、たとえばアセトアルデヒドやベンズアルデヒドなどの発生が褐色瓶よりも抑えられる傾向が見られた。つまり、アルミ缶の方がフレッシュな香りを保ちやすい可能性がある。一方で、酸味成分については、乳酸、リンゴ酸、コハク酸などを分析した結果、アルミ缶と褐色瓶の間に大きな差は見られなかった。さらに、東京農業大学を中心に、筑波大学、国立台湾大学、フランス・ボルドー大学とも連携し、異なる食文化圏の参加者による官能評価も実施している。これまでに90名規模の評価が行われており、今回のシンポジウムでは、30日間保存した日本酒を参加者が実際に飲み比べた。

講演で提供された日本酒は、日本酒Aがアルミ缶保存、日本酒Bが褐色瓶保存のものだった。曽助教自身は、アルミ缶保存の日本酒Aの方に甘い香り、いわゆる吟醸香が残り、フレッシュさが保たれているように感じたという。今後、保存期間が長くなるほど、アルミ缶と褐色瓶の違いはより明確になる可能性があると述べた。

講演の結論として、日光照射環境下ではアルミ缶は褐色瓶に比べて日本酒の着色を抑え、香りのフレッシュさを維持しやすい可能性が示された。一方、酸味成分には大きな差がないことも確認された。

最後に曽助教は、日本酒の魅力を世界に広めるには、味や香りの評価だけでなく、容器、流通、保存性など多角的な研究が重要だと強調。日本酒に関心を持つ人々が力を合わせ、その価値をさらに発信していくことへの期待を語った。

また東京農業大学 産学官・地域連携センターの入江 彰昭 センター長が日本酒シンポジウムの閉会挨拶を担当。

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入江 彰昭 センター長

入江センター長は、日本酒をテーマにした今回の議論を「東京農業大学が大切にしてきた実学の姿そのもの」と振り返り、日本酒が農学、醸造学、微生物学、食品科学、流通、地域文化が重なり合う分野であり、東京農業大学としても産学官・地域連携を通じて、企業、地域、行政機関、学生、研究者がともに課題解決に取り組む機会を広げていきたいと語りました。

さらに、同大学が今年4月から開始したアントレプレナーシップ教育プログラムにも触れ、アントレプレナーシップとは「単に起業を目指すことではなく、社会課題を見つけ、自ら行動し、新たな価値を社会に実装していく力を育てるもの」として、東京農業大学を卒業し今年4月、東京農業大学 総合研究所 客員准教授に就任した株式会社Agnavi 玄 成秀 代表取締役の取り組みを紹介。日本酒という伝統産業に対し、「一合缶」という新しい形で流通や消費の可能性を広げようとする挑戦は、実学とアントレプレナーシップが結びついた好事例だと紹介しました。

当日は東京農業大学の学生ボランティア14名が運営に参加。学生たちにとって企業・研究者・来場者との接点となり、日本酒産業が抱える課題や新たな価値創造の取り組みについて学び、社会との接続を実践的に体験しました。

東京農業大学は今後も醸造科学科における教育研究を中心とした「総合農学」の推進により、日本の「伝統的酒造り」の継承と発展に貢献していきます。

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株式会社Agnavi 玄 成秀 代表取締役(東京農業大学 総合研究所 客員准教授)

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