東京農業大学

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食を通じてより良い社会を実現する「食のディレクター」を育成

山村再生プロジェクト

多様な実践を通した“学び”を身につける教育プログラム

国際食料情報学部のなかで食料環境経済学科がメインとなって行っている教育プログラムに、山村再生プロジェクトがあります。本プロジェクトは10年以上に渡って長野県長和町と連携し、毎回2泊3日で長和町を舞台とした実習を行っています。ひとつの地域にこれだけ長い期間に渡り、教育プログラムとして組織的に関わり続けるということは、教育機関として非常にオリジナリティの高いものだと思います。
日本は少子高齢社会として様々な難問を抱える時代に入っていると言われています。特に自分たちの生活の場である身のまわりの環境=地域社会の衰退は、これから誰もが当事者として向き合わざるを得ない社会問題となってくるでしょう。現在の東京で暮らしていれば少子高齢社会の進行はあまり見えてこない問題かもしれません(実際には大都市でも深刻化しているが)。しかし、ひとたび視野を広げて大都市以外を見てみれば、日本の地域社会の現状は深刻な状態にあることを肌で感じると思います。 その意味で自分の目で見て、考えるという実践を長和町の地域活性化や特産品開発という現実の体験から学ぶことは、まさに「アクティブ・ラーニング」の本懐であると言えるでしょう。以下、山村再生プロジェクトの活動内容について紹介いたします。

1、有休荒廃農地の活用

まず、本プロジェクトの基盤となる圃場(田畑)作業についてです。当初から有休荒廃農地の活用を行ってきた本プロジェクトは、現在でもその活用を進めています。最も古くから関わりのある芹沢圃場で稲作、畑作(野菜など)、そして特産品の「池田南蛮味噌」に用いる南蛮(トウガラシ)、立岩和紙の原料である楮(コウゾ)を栽培、収穫しています。また、特産品開発のために池ノ平圃場・岡森圃場・鷹山圃場で機能性雑穀のエゴマ、キヌア、アマランサスの栽培、収穫にも取り組んでいます。

2、自然資源の保護

初夏の頃、20年来継続して行なっている本沢渓谷「農大の森」の植樹と整備を行います。

3、伝統文化・歴史体験

圃場作業だけでなく、長和町の歴史と文化について理解を深めることで、地域活性化の手がかりを探す実習も行っています。主な活動として、長久保地区の松尾神社例大祭への参加、古町地区のおたや祭り、どんと焼き、観音寺見学、他にも地域の方に教わりながら、やしょうま作りや繭玉作りという郷土料理づくりを体験します。その他にも、歴史のある中山道の和田宿では、宿場町について解説員に学びながら町並みを歩いて回り、黒耀石ミュージアムでは、縄文時代にさかのぼる長和町付近の歴史を理解し、黒耀石を加工してキーホルダーをつくる体験、また、農大生が提供する楮(コウゾ)を原料とした立岩和紙の伝統的な和紙漉き体験も行います。

4、特産品開発

本プロジェクトでは地域活性化を目指し、特産品開発を学生主体の班活動のなかで行っています。例えば、「長和のトマト」「池田南蛮味噌」「エゴマ油」「キヌア」「アマランサス」の開発に取り組み、商品化しました。特に「長和のトマト」「池田南蛮味噌」は学生たちが収穫、加工に取り組み、専門指導のもとで調理、加工、瓶詰め、ラベル貼りなどを担っています。完成した商品は農大の収穫祭などで販売します。つまり、生産から加工、販売まで一連の流れを通して商品開発をトータルに学べるところに本プロジェクトの特産品開発の特徴があると言えるでしょう。

5、地域交流

圃場作業の他に長和町の行事に参加することで地元の方々と交流し、地域の現状を知る機会を設けるようにしています。4月に長久保地区愛宕山観桜会への参加、小茂ヶ谷地区のしめ縄作りの手伝い。7月に長久保若衆会と協働で道路沿いの草刈りと流しソーメン、長久保宿の見学。10月には窪城地区でしめ縄作りの手伝いとその後の懇談会を行いました。その他には、デニムメーカーCANTONとコラボ企画で進めている農作業着開発の一環で地元の若手農家の方々と意見交換も行いました。地域おこしのコンサルや地域おこし協力隊の隊員にグリーンツーリズムについて講義をしてもらう機会も設けました。更には、3度の国際交流(台湾、中国、アメリカ)として各国の大学生と実習を共にし、懇親会ではお互いについて学ぶ文化交流を開催しました。また、上田市にある丸子修学館高校の生徒が毎月の実習に参加し、協働しています。その他、長和町をグリーンツーリズムのフィールドとし、学生が主体となって全国農協観光協会とコラボし、実際の実習で一般の方々を案内しながら、交流するという企画も実施しています。

6、地域再生プランニング

実習では夜にワークショップを行います。ワークショップは、①実習に行く前の事前学習から、②実習1日目でグループに分かれて論点整理、③実習2日目は1日目に出た論点を踏まえながら実際の現場を体験し、そこで得た知見を再度、ワークショップに持ち帰り、グループワークの中で自らの体験と座学で得た知識を融合し、みんなの前でプレゼンテーションします。④最後に事後学習として実習での一連の流れをそれぞれまとめ、自分の意見を加えた課題レポートを提出してもらいます。
テーマも多岐にわたりますが、例えば「関係人口から考える地域活性化」「SWOT分析からみる長和町」「データから読み解く鳥獣被害」「農産物直売所の課題と展望」など長和町を具体的な事例としながら、地域社会を多角的に検討し、地域活性化や地域再生について自分でプランニングできるようになる方法を学んでいます。実際に農産物直売所(上田市丸子農産物直売加工センターあさつゆ)を訪問し、ワークショップで話し合われたアイデアを担当の方に提案したりもしました。あと、先ほど述べたようにグリーンツーリズムについても学生が案内ポスターづくりから、実際のツアーで参加者のコーディネートなどを担います。他にも実習におけるリスクを考えるために全国農協観光協会から講師を招き、リスクマネージメント講習を行ったりもします。

7、「食と農の博物館」でのイベント開催

農大世田谷キャンパスにある「食と農の博物館」にて長和町で栽培収穫加工している特産品開発の成果であるアマランサスなど機能性雑穀の試食会、「地域を活用した特産品開発を学ぼう!~長野県長和のトマトソース、アマランサスの試食~」を行いました。これは機能性雑穀の認知度を上げるための試みであると同時に、産地である長和町の名前を全国に広めるための試みでした。学生が準備の段階から取り組み、当日も料理や資料作りを行い、おかげさまで一般の方に積極的に参加いただきました。長和町の地名と機能性雑穀を広めることの一助となったと思います。

8、農大でのミニシンポジウムとワークショップ(12月実習)の開催

12月実習は農大世田谷キャンパスで開催します。長和町から役場、現地指導員、OBを招待し、ミニシンポジウムとワークショップを行います。昨年度の全体テーマは「教育プログラムとしての山村再生プロジェクトと地域活性化」であり、このテーマ自体を学生がディスカッションのなかから決めました。2日目は「SWOT分析から考える山村再生プロジェクトの展望」というタイトルでワークショップを行いました。普段の長和町での実習とは一味違う、座学をメインとした農大開催ならではの企画を学生が中心となり、考えます。

最後に、ひとつのフィールドでこれだけのヴァリエーション豊かな教育プログラムを展開していることは、本プロジェクトがこれまで長和町と東京農業大学との間で信頼関係を築き上げてきたことの賜物だと思います。この信頼関係があるからこそ今後も新しい取り組みに向けて本プロジェクトは長和町をフィールドとして様々な探求を試みることができるでしょう。そのような場を持つことができている本学部、本学科の強みを活かし、今後も長和町との信頼関係を大切にし、地域活性化に少しでも寄与できることを目指します。また教育プログラムとして学生たちが社会に出ても役立つ実習となるよう、より一層の内容の充実を図っていきます。学生のみなさんがいかに主体となって地域社会と関わることができるのか、実践を通して考えることのできるプロジェクトとなっております。

文 山村再生プロジェクト担当教員 増田敬祐

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芹沢圃場での作業(楮(こうぞ)などの栽培)

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池ノ平圃場での作業(エゴマなど機能性雑穀の栽培)

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松尾大社例大祭に参加し大根踊りを披露する農大生

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ワークショップでのプレゼンテーション

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