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ニュースリリース

共同研究「ツキノワグマの独り立ち ~子グマが出生地を離れる時期と距離を解明~」

2023年2月17日

教育・学術

 国立大学法人東京農工大学大学院農学府 修士課程学生 高山楓(当時)、同大学院グローバルイノベーション研究院の小池伸介教授、長沼知子特任助教(当時、現 農研機構)、同大学院連合農学研究科 博士課程学生 稲垣亜希乃、栃木香帆子、ノルウェー南東部大学(兼任 元東京農工大学大学院グローバルイノベーション研究院・特任准教授)のAndreas Zedrosser教授、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所の大西尚樹動物生態遺伝担当チーム長、群馬県自然史博物館の姉崎智子主幹(学芸員)、東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科の山﨑晃司教授らの国際共同研究チームは、計550頭(オス378頭、メス172頭)の遺伝情報と年齢情報に基づいて、世界で初めてツキノワグマにおける出生地(注1)からの分散(注2)距離と、分散を行う時期を明らかにしました。その結果、平均分散距離はオスの17.4kmに対し、メスは4.8kmと短いことが分かりました。また、オスは3歳になるまでにほとんどの個体が出生地を離れることも分かりました。一方、メスは成長しても出生地周辺にとどまることで、比較的狭い範囲において遺伝的に関係の近い、母系の集団が維持されていることが示唆されました。

 本研究成果は、アメリカの哺乳類学誌「Journal of Mammalogy(略称:J Mammal)」オンライン版(2月14日付)に掲載されました。
論文名:Timing and distance of natal dispersal in Asian black bears.
著者名:Kaede Takayama, Naoki Ohnishi, Andreas Zedrosser, Tomoko Anezaki, Kahoko Tochigi, Akino Inagaki, Tomoko Naganuma, Koji Yamazaki, Shinsuke Koike

ポイント

  • 計550頭の遺伝情報と年齢情報を用いて、ツキノワグマが生まれた場所から離れる時期とその距離を算出しました。
  • 平均距離は、オスでは17.4km、メスでは4.8kmと、オスはメスよりも遠くに分散していました。
  • オスでは3歳までにほとんどの個体が出生地から分散していました。
  • 一方、多くのメスは生まれた場所の周辺にとどまることで、狭い範囲に血縁関係の近い個体どうしが多く生息する状況になっていました。

用語説明

  • 注1)生まれ育った場所。
  • 注2)個体がそれまでの生息してきた場所を離れて特定の場所に移住すること。特に、生まれた場所、つまり母親の行動圏から自らが繁殖する場所へと移動する分散を出生後分散といい、一方通行の移動を示す。

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