東京農業大学

メニュー

教員コラム

地域食材によるピザ製品の開発

2013年7月1日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(16)

高品質な地域資源の活用(8) 広い年齢層が好むピザ

身体障害者支援のNPO法人が運営しているパン屋さんがあり、その商品の種類を広げるため、ピザの開発を行いました。ピザは宅配が普及していますが、それらとは大きく異なったものを目指すことにしました。すなわちコンセプトは北海道産原料を使い、安価で低カロリー、子供から高齢者まで幅広い年齢層に好まれる製品です。

はじめにピザの生地について検討しました。もちろん小麦粉は北海道産で、いろいろな種類の小麦粉を使って試験を行いましたが、中力粉の「ホクシン」という種類を中心に使うことにしました。生地に特徴を出すため、地域の規格外農産物を練り込んで野菜の色を生かすことも試みましたが、具材が上に乗って見えなくなってしまうため、今回は小麦粉を主原料として用い、その他の副原料の配合や発酵時間、焼成温度など、最適な条件の検討を行いました。生地の配合が決まった後は上にのせる具に用いる材料について考えていきました。低カロリーということなので、チーズやトマトソースなどを使うこれまでのピザの概念にとらわれず、この地域の食材を使うということにこだわり、農産物はジャガイモ、カボチャ、ニンジン、ゴボウなど、水産物は鮭、鱒、ホタテ、牡蠣など、畜産物は地域で生産している各種チーズをはじめ、高タンパクで低脂肪のエゾシカ肉、エミュー肉などが候補としてあがりました。若い学生たちの発想をできるだけ取り入れ、いろいろなアイデアを出し合い、意見交換をしながら何回も試作を繰り返しました。

その結果、この地域の材料ということで、カボチャペーストをソースとして用い、カボチャをたくさん使った「カボチャピザ」、ホワイトソースをベースにサロマ湖産の牡蠣を使ってグラタンのように仕上げた「牡蠣グラタンピザ」、きんぴらゴボウのようなゴボウをのせた「ゴボウピザ」、そのほか麻婆豆腐、エゾシカ肉などを使ったピザの試作も行いましたが、最終的にカボチャ、牡蠣、ゴボウの3種類に絞りました。また、生地の試作段階で、オーブンで焼成する際生地に針穴をあけておかないと膨らんでしまったことからアイデアが浮かび、そのようになってしまった生地を2つに切って、中に野菜を詰め込んでできた「サラダピザ」も加え、4種類を販売することに決めました。

実際に販売するにあたっては、開発にかかわってくれた学生とともにパン工房に出向き、現場での試作と試食を重ねて商品らしいものに改良していきました。さらに持ち帰り用の箱のデザインも学生が考えたものを採用していただきました。このように、学生の嗜好を取り入れながら、これまでにないピザ製品を開発することができたのではないかと思っています。

その後このパン工房は最近リニューアルして「ローフ」という名前の店になり、いろいろなパンやピザを店内でも食べることができるようにカフェのスペースも充実しました。これらの製品が多くの皆さんに知られることにより、NPO活動の支援につながればよいと思っています。

 

ページの先頭へ

受験生の方