東京農業大学

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教員コラム

地域原料によるクッキー製品

2013年7月1日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(15)

高品質な地域資源の活用(7) 手軽な土産品の開発

北海道オホーツク地域は農水産資源に恵まれ、高品質な一次産品が豊富ですが、同時に形状や大きさなどが少し違うだけで規格外品となるものも多いのが現状です。これらの品質は全く変わらないことから、このような高品質な原料を用いた地域の土産品の開発に取り組みました。この地域の土産物というと魚介類が中心で、これらは冷蔵、冷凍品が多く保冷剤が必要なため手軽に持ち運べないのが現状です。菓子類は札幌や帯広のメーカーのものがほとんどで、オホーツクの地域をイメージするものではありません。そこでこの地域の原料を使った手軽な土産品が作れないかということを考えました。

土産品としての条件は、軽くてかばんに入れやすい包装形態、常温で持ち運べ価格は千円以内、包装デザインはおしゃれで地域のイメージが湧くようなものなどと考えます。もちろんネーミングも大切です。北海道の土産の定番として、石屋製菓の「白い恋人」がありますが、これはまさにその土産品としての
条件をすべて満たしている製品であると思います。

私はこの地域の規格外野菜、ニンジン、カボチャなどを生地に練り込み、野菜の色や風味を感じるクッキーの開発を試みました。「白い恋人」はラングドシャでホワイトクリームを挟んだものですが、私は野菜クリームを挟むことを考えました。小麦粉、野菜、牛乳、砂糖など、オホーツク地域の良質な原料をふんだんに使った製品は、自信をもってこの地域の土産品として定着できるものと思います。

そこで地域のお菓子屋さんの協力を得て試作をしてきましたが、特に機械設備もないところでそのような手をかけることはできず、クリームはやめてクッキーとして開発することにしました。その場合、練り込む野菜の水分を考慮しなくてはならず、原料の水分を一定に調整するなど配合割合の検討が必要でした。その結果、オレンジ色のニンジン、黄色のカボチャ、緑色の大麦若葉の3種類のクッキーが完成し、それらをセットで販売することにしました。これらは当然健康機能性もあり、食物繊維やカロテンなどが含まれます。またこれと並行して、大人のクッキーとしてビールに合うものができないかということで、サケやチーズなどを練り込んだ塩味のクッキーも試作し、細いスティック状にした製品もできました。

これらを株式会社東京農大バイオインダストリーで販売をしていただいたところ好評でしたが、少量の手作りのため包装に費用をかけられず、おしゃれな土産品というところまではいきませんでした。それに野菜を練り込んでいるため壊れやすく、包装形態やデザインだけでなく製品そのものにも課題が残りました。そのようなわけでこの製品は1年ほどで製造をやめてしまいましたが、改めてメーカーとともに開発に取り組み、この地域の高品質な地域の原料を使った土産物として復活させたいと思っています。いつか「白い恋人」以上のヒット商品になることを目指して。

 

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