東京農業大学

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教員コラム

網走産原料によるイチゴジャム

2013年4月12日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(14)

高品質な地域資源の活用(6) 地域農産物の高付加価値化

前回に引き続きジャム製品について紹介します。これまでオホーツクキャンパスの収穫祭では、私の研究室で製造したジャムの販売を行っているほか、同好会「おいしいパン研究会」でも活動の一環としてイチゴジャムとブルーベリージャムを製造し、学内の売店で常時販売をしています。売店での販売は平成15年から継続しており、教職員の出張や学生の帰省のお土産などに利用していただき、大学の広報にも一役買っています。これらの原料は常時入手が容易な輸入原料を用いていますが、株式会社東京農大バイオインダストリーのお客様から、地域で生産されている原料を使えないかという要望が多かったこともあり、網走でイチゴを栽培されている農家とその検討を進めました。

同社からの依頼を受け、原料の数量が限られていることや地域で製造してくれる工場もないことから、製造は私の研究室の学生に手伝ってもらい、本学の食品加工技術センターで行うことにしました。原料イチゴは生食用のため、決して加工に向いているものではありませんが、原料の状態を見ながら丁寧に製造しています。ラベルのデザインも学生が考えてくれました。製品はすべて株式会社東京農大バイオインダストリーが買い取り販売しており、同社を通して農大生協にもお願いしています。種々のイベントなどにも使っていただき、高い評価をいただいています。

私どもが作っているジャムはプレザーブスタイルといい、果実の形を残したものです。このような製品を作るには原料がよくなければできません。一般にジャムは形を残さなくてもよいので、その原料は二等品を使うことが多いのですが、地域の高品質な原料が使えるため、高級な製品に仕上げています。このような果実の形状を残す作り方は、ゲル化の条件であるペクチン、酸、糖の3成分のバランスを考慮しないとゲルの状態が劣ってしまいます。また、果実を柔らかく仕上げるためには急激な糖度変化は避けなくてはならず、加熱の仕方にも工夫が必要です。この製品は一部原料を潰して混ぜることにより、ジャムの食感をバランスよく仕上げることができました。このような製品作りのもう一つ難しい点は瓶への充填です。一つずつ手で詰めていますが、イチゴの粒は上に浮いているため、全体を混ぜながら入れないと粒の量が一定になりません。一般に販売する製品ですので、衛生面はもちろん、このような細かいことにも注意を払って作業をしなくてはなりません。手伝ってくれている学生は通常の実習とは違う緊張感をもって作業しており、実際の製造現場を体験できる教育効果もあります。製造の最後はキャップ部分にフィルムをシュリンク包装し、ラベルを貼って完成となります。出荷前には瓶やラベルの汚れなどを確認することも行っています。これまで特に大きなクレームもなく、順調に売り上げを伸ばしており、製品の評価が徐々に上がってきています。大学は製造工場ではないので、常時このようなことはできませんが、研究室の学生の教育も兼ねて、年間の数量限定で時間の空いたときに製造しています。

 

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