東京農業大学

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教員コラム

ラズベリージャムの製品化

2013年3月5日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(13)

高品質な地域資源の活用(5) 新規就農者支援

十勝管内、帯広市の郊外でいろいろなベリー類を家族で栽培している農家さんと出会いました。2010年に帯広市岩内というところで新規就農され、「ときいろファーム」という農場でラズベリー、ハスカップ、ブルーベリーなどの小果実の栽培をされています。このご夫婦は本物のベリーを求めて自転車でヨーロッパを旅しながら勉強され、その経験を生かして農園を始めました。できるだけ自然に近い農法で栽培し、高品質な果実を提供したいという強い思いをもって取り組んでこられました。ある程度規模も拡大して次の展開ということを考えた場合、これらの加工をしようということになり、私に指導を求め一緒にジャムやフルーツソースなどの開発を行いました。

はじめにジャムの製造として、一般的なイチゴを原料に使い、理論と実際について学ぶ機会をもちました。ジャムは糖類、酸、ペクチンの3成分によりゲル化する性質を利用したもので、ゲル化の程度や酸、糖のバランスなど、配合によりいろいろな特徴のあるものができます。工程中大切なことは、なるべく強火で短時間に加熱濃縮させることです。一般家庭では「弱火でゆっくり煮詰める」というやり方をされることが多いようですが、これは大きな間違いで、そのようにしてできたものは「ジャム」ではなく、ただ煮詰めただけの「あめ」のようなものになっています。短時間に仕上げることで、良好なゲルが形成されるとともに、色調や香りもよく仕上がります。

そのようなことを十分に理解していただいた後、地域の食品加工施設を利用し、自家農園のラズベリーを使って試作を重ね、問題点の解決をしていきました。原料処理から加熱濃縮、瓶詰、殺菌などの工程をほとんど一人で行うため、一定の品質のものができるまでには大変苦労されたようですが、できるだけ原料の特徴を生かした製品造りを目指し、ゲル化剤としてのペクチンは、原料に含まれている成分だけを利用して別に加えることはせず、糖度もなるべく低くした製品に仕上げました。従ってゲルの程度は弱くなりましたが、原料の風味が豊かで、色調も大変きれいなものになりました。

ベリー類の成分の特徴は、ビタミンCや鉄分、カルシウム、カリウムなどのミネラルが豊富で、アントシアニンなどのポリフェノールも多く、機能性のあることが知られています。そのような成分を生かした製品が完成しました。

さらにハスカップのジャムやフルーツソースも同様に開発し、製品化されました。その後もいろいろなことに挑戦されており、現在ベリー類を用いたフルーツビールも一緒に開発中です。原料生産から加工、販売まで手掛け、ベリー類に強い情熱を注がれているばかりでなく、現在も行っている小学生などを対象とした農園研修などをさらに発展させ、多くの人たちが体験できる農園と農家民宿の立ち上げなども計画されており、将来がますます楽しみな農園です。



 

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