東京農業大学

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教員コラム

北海道ビート黒糖

2013年1月23日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(12)

高品質な地域資源の活用(4) テンサイの利用拡大

オホーツク地域において、麦、馬鈴薯、テンサイ(ビート)は畑作主要3品といわれ、多くの生産量を誇っています。そのうちテンサイは砂糖の原料として栽培されており、北海道内には現在3社の製糖会社があり、テンサイの生産地周辺には製糖工場が稼働しています。

砂糖の消費量減少に対する生産量維持のための消費拡大を目的として、網走青果の鈴木氏より「テンサイから黒糖はできないだろうか」という話がありました。テンサイはサトウキビとは異なり、未精製の糖液はアクが強く泥臭さなどがあるばかりでなく、不純物が多い状態では結晶化を阻む成分があるため製品化は困難であるということを申し上げました。しかし、網走市と沖縄県の糸満市は友好都市の関係にあり、鈴木氏は何度も沖縄に行き、その製法を学んでこられました。そこで私もその熱意に動かされ、その製品化に向けた協力をすることにしました。

種々検討した結果、製法の詳細は公表できませんが、テンサイ糖液からある程度アク成分を除き、それを煮詰めることにより、黒糖を得ることに成功しました。得られたテンサイからの黒糖はサトウキビの黒糖と比べてさっぱりとした味が特徴で、原料に含まれる成分として、オリゴ糖のラフィノースは免疫力を高める効果、イノシトールはビタミンB群の一種で体内脂肪の調整やコレステロールの制御など抗脂肪肝に有効であるとされています。このようにテンサイからの黒糖は食味とともに健康機能性を有する成分が含まれていることなども大きな特徴となっています。

製品化にあたって市民から名称を公募し、「天才ビートくん」と命名されました。現在製品は「プレーン」のほかにいろいろな味をつけた「ココア」、「コーヒー」、「ミント」など全部で7種類と、「ビート黒糖シロップ」などが販売されています。

この「ビート黒糖」は販売されてから、沖縄県の黒糖製造者より、「黒糖」と称することができるのはサトウキビを原料としたものであって、テンサイから作られたものは「黒糖」ではない、というクレームがありました。それに対し、単に「黒糖」ということではなく、「ビート黒糖」としているので、沖縄の黒糖とは違うことを主張していますが、消費者庁でも黒糖はあくまでもサトウキビから製造するものという見解を示しており、名称に関してはまだ解決していません。そのような問題は残りますが、このテンサイの黒糖「天才ビートくん」やシロップは大変評判がよく、お土産物としても販売数量を伸ばしています。さらにこのビート黒糖は他に菓子類やビール、焼酎などの原料としても使えないかという検討を行っており、その中でもビート黒糖を使った黒ビールはすでに製品化され、販売を開始しました。この黒ビールも農大での研究成果をもとに網走ビール株式会社で醸造したものです。このように「ビート黒糖」は網走の特産物として定着しつつあり、今後、名称の問題の解決が望まれます。


 

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