東京農業大学

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教員コラム

「オホーツクます鮨」の開発

2012年12月11日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(11)

高品質な地域資源の活用(3) 地域資源で作る空弁

北海道の中でもオホーツク地域は豊富で高品質な農水畜産物の生産地として知られており、日本の食糧供給基地としての役割を果たしていますが、十勝地域と比べるときわめて加工度が低く、単に原料を供給するだけにとどまっているのが現状です。そのような状況を改善するため、オホーツク海の新鮮で豊富なカラフトマスを利用した製品として、産業クラスターのグループにより「ます鮨」の開発を行いました。

これは2002年から2004年にかけて黒瀧秀久教授(地域産業経営学科、オホーツク実学センター長)が中心となって進めたプロジェクトで、マスだけでなく、米や笹の葉、容器として用いる経木など、オホーツク産の原材料にこだわった製品作りを目指したものです。すなわち、地域資源の地域内循環、地産地消、地域内の産業間連携ということを基本コンセプトとし、この地域資源の高度活用ということを目的に行われました。そこで、漁協(マス)、米販売店(米)、木材加工業(容器:経木)、食品加工業(加工技術)、小売店など、農林水産業や加工、流通業などとのクラスター連携と新たな加工技術の開発による地域商品として「オホーツクます鮨」の製造販売を行ったものです。

「ます鮨」といえば富山県が有名ですが、必ずしも地域の食材、包材などにこだわったものではありません。そこで「オホーツクます鮨」はこの製品に合う米の種類の検討から始まり、マスの切り身の大きさや厚さ、モッツァレラチーズとの組み合わせを試みるなど、種々の検討を重ねるとともに、容器は富山でも使われているオホーツク産天然エゾマツ材の経木を使いました。さらに、内容量、容器の形状、包装デザイン、価格などを決めるため試食会や市場調査などを行い、試行錯誤の末、商品の完成に至りました。

さらにこれに添付している醤油は本学の食品加工技術センターで技術開発したオホーツク産サケの魚醤油で、これも製品との相性がよく、高評価が得られました。

当時、全国の空港では「空弁」としていろいろな弁当が開発されはじめた時期で、この「オホーツクます鮨」は日本航空の空港店舗や通販などを行っている"株式会社Jalux"がとりあげ、新千歳空港、女満別空港の"BLUE SKY"という売店で買い取り販売をしていただき大変好評を得て、売上ランキングでは当初8位でしたが、1位にまで上り詰めました。現在は残念ながら製造者の都合により製造は行っていませんが、いずれまた復活できる時が来るものと思っています。

このように、この「オホーツクます鮨」の開発は、はじめにも述べたように、この地域の原料供給型の産業構造を脱却し、自ら加工することによる付加価値向上という点で大変意義のある取り組みでした。このような例を参考に、今後さらに地域食材を利用した多くの加工品が開発され、この地域の製品が販売されていくことを期待したいと思います。


 

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