コロッケの開発
2012年11月6日
生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫
オホーツク新食品誕生記(10)
高品質な地域資源の活用(2) 地域の食材を提供
北海道の高品質な食材を生かした製品開発ということはいろいろなところで検討されています。知床半島の入り口に位置する斜里町もその1つで、地元の商工会が中心となって新製品開発の検討を進めました。地域の農協、漁協関係や婦人部の皆さんが集まり、地域の食材を使ってどのようなものを作ったらよいかということから検討を始めました。いろいろな意見がありましたが、海のもの、畑のもの、酪農品など、この地域で誇れるものをできるだけ多く使った製品作りを目指し、子供から大人まで幅広い年齢層に受け入れられるものということで、コロッケの開発を行うことになりました。
コロッケはだれにでも手軽に食べてもらえるし、子供たちの給食に使ってもらえるならば、地域の食材を理解する食育にもつながるだろうということや、知床観光の中心である斜里町宇登呂には温泉旅館が多く、そこで観光客にも食べてもらい、町をアピールできる機会になるということなど、製品開発に向けた考えは大きく膨らんできました。
早速試作にとりかかり、特に婦人部の皆さんの熱の入れようは大変なもので、毎回いろいろなアイデアのコロッケが紹介されました。鮭の切り身で具を巻いた鮭ロールコロッケなど、一般に売られていないような特徴のある製品作りを検討してきましたが、実際の製造ということを考慮すると、あまり手の込んだことは不可能であるため、それを納得していただくのが大変でした。コンセプトは斜里産の高品質の材料を使うとともに、栄養機能性に優れ幅広い年齢層に受け入れてもらえるものということでした。そこで最終的に「鮭中骨入りコロッケ」、「鮭クリームコロッケ」、「人参コロッケ」の3種類に絞り込みました。
鮭中骨入りコロッケは高圧処理により軟らかくした鮭の中骨と鮭肉を入れたポテトコロッケとしました。これは当然カルシウム分が多いのが特徴です。鮭クリームコロッケは、良質な牛乳とクリームをベースに鮭肉を加えたもので、これも牛乳の風味が生かされた高タンパク質で栄養価の高い製品になりました。人参コロッケは人参をベースとしたカレー味にして、人参の嫌いな子供たちでも食べやすくしたものです。これは人参由来のβ-カロテンを豊富に含みます。このように、それぞれ特徴のあるこの3種類のコロッケを斜里の名物にしていこうということになりました。
この検討委員会での結論を受けて、町内の食品会社や農業者などが出資して「シャリーズキッチン」という会社が設立されました。そこでこの3種類の製品を製造し、当初の予定通り学校給食や温泉旅館などで利用していただくことになりましたが、問題は価格で、特に冷凍品となるとどうしても流通コストがかかり割高になってしまいます。原料の調達を工夫したり、形を小さくして1個あたりの価格を抑えたりして何とか斜里産の加工食品ということで維持してきました。現在この会社は身障者支援の団体が引き継ぎ、運営を行っています。