東京農業大学

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教員コラム

流氷ドラフトの誕生

2012年9月12日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(8)

ビール・発泡酒の開発(7) 流氷をイメージした発泡酒

北海道網走市は流氷が接岸する世界で最も南の地域として知られ、そのシーズンには多くの観光客を迎えています。そのような地域に立地している地ビール会社「網走ビール株式会社」では、流氷をイメージした製品ができないかということを検討し、青く着色した発泡酒の醸造を計画していました。本学部ではこの会社の設立当時から技術支援を行っており、その相談を受けて産学連携による新製品開発を行い、青い発泡酒「流氷ドラフト」が誕生しました。

着色をするということは、どんなに目標とする色素を加えてもベースとなるビール(発泡酒)の色をつけないようにしないとその色は出せません。ビール、発泡酒の色は麦芽由来のもので、麦芽を少なくすればそれ相応に色を淡くすることができますがコクのない淡白な味なることと、泡もちも悪くなってしまいます。それを解決するためには、まず麦芽の使用量をできるだけ少なくし、味の補強は小麦を加え、泡の改善にはナガイモを用いることにしました。種々工程の検討を行い、最終的に海藻由来のスピルリナ色素を加えて着色して完成したのが「流氷ドラフト」です。この製法はこれまでの我々のビール醸造におけるノウハウを結集した製品ということができます。さらに色素は網走ビールの條工場長と同期で、私の研究室の卒業生が勤務している会社で選択していただき使用しました。従ってこれは、農大のネットワークにより生まれた製品ということができます。

地ビールである以上、地元でいつでも手に入るようにしたいということで、地域の酒屋さんや土産物を扱うお店、ホテル、空港売店などで販売するとともに、地元の皆さんに応援していただきながら販売することになりました。その結果2月の流氷シーズンに発売されてから、1年間で20万本を売り上げる大ヒット商品となりました。冬の流氷をイメージしたものですが、夏も涼しそうな色であることから、1年を通して売れ行きは好調で、話題性もあり地域だけでなくインターネットなどを通じて広く全国に販売されています。

発泡酒に色素を加えるという製法はほかにはほとんど例がなく、新たなアルコール飲料というカテゴリーを切り開いた発泡酒ということができるでしょう。冬のイメージの「流氷ドラフト」が完成し、ヒットしたことから、引き続き大学と網走ビールで連携し、北海道の夏の代表的な花であるハマナスの果実成分と赤い色素を加えて夏をイメージした「はまなすドラフト」が第2弾として開発、販売されました。その後同様な手法で知床の春をイメージした緑色の「知床ドラフト」、ジャガイモの薄紫色の花をヒントにジャガイモやマタタビなどを加え、収穫の秋をイメージした「じゃがドラフト」が完成し、現在4色の発泡酒「四季シリーズ」が販売されています。 このように、地ビールはこれまでのビール、発泡酒にとらわれない「遊び」ができる面白さがあり、今後さらに多くの製品が生まれることを期待したいと思います。

 

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