東京農業大学

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教員コラム

スィートコーン、ニンジンの発泡酒

2012年6月4日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(6)

ビール・発泡酒の開発(5) 委託醸造システムの構築

ナガイモの発泡酒が話題になり、地域の地ビールとして販売されてマスコミなどでも取り上げてくれました。そのような報道を見て「自分達の町にはこんなものがあるが、それを利用したビールができないか」という地域が出てきました。北海道の十勝平野のほぼ中央に位置する士幌町から、地域のスィートコーンやカボチャを使って地ビールを造りたいという依頼がありました。早速ナガイモの場合のように原料を送っていただき、原料配合や糖化、発酵条件などを検討し、100リットル規模の試験醸造を行いました。製品は士幌町で試飲会を行い、スィートコーンの発泡酒を製品化しようということになりました。

その後やはり十勝管内の陸別町からニンジンを使った発泡酒の醸造依頼がありました。陸別町は「日本で一番寒い町」として売り出し、別名を「オーロラタウン」と称しています。従って、オーロラをイメージしたオレンジ色の発泡酒を造りたいということで、ニンジンの割合をできるだけ多くして、色を楽しむ発泡酒の醸造を行いました。士幌町のスィートコーンの発泡酒、陸別町のニンジンの発泡酒は網走ビールに醸造を委託して、それぞれ「シューパロ」、「βぼれ」という名称で製品化されました。これらの発泡酒は話題性もあり、全国の新聞やテレビなどで取り上げてもらい、売り上げを伸ばしました。特にニンジンは規格外を使っていましたが、その数が足りなくなり、陸別町では原料の確保に大変な思いをされたようです。

このような地域の地ビールはいずれも委託醸造で、その地ビール経営の1つの形が確立されました。すなわち図に示したように、委託する側(地域)では全く醸造設備をもたず、その地域の地ビールが販売できること、委託を受ける側(網走ビール)は醸造した製品はすべて買い取ってもらえるため、販売の労力がいらず無駄がでません。ただし、その間には試験研究機関が必要であり、その役割を担っているのが東京農大ということになります。地ビール会社が経営不振に陥るのは、設立当初の設備投資がいつまでも重い負担になっていることが多いのですが、このような委託醸造の関係はそれを解決する方法として注目されます。

 

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