東京農業大学

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教員コラム

日本の大学で唯一の免許

2011年11月14日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(2)

ビール・発泡酒の開発(1) 平成7年から試験醸造

オホーツクキャンパスにはビールの醸造装置が設置されています。平成6年、政府の規制緩和により酒税法が改正され、ビールの年間最低製造数量はこれまでの2,000キロリットルから60キロリットルに引き下げられました。これにより各地で地ビール会社設立の動きが活発化し、製造内免許を取得して準備が進められ、平成7年2月にはエチゴビール(新潟県)、翌3月にはオホーツクビール(北海道)がオープンし、その後全国で300社以上の地ビール会社が誕生しました。

オホーツクキャンパス食品科学科(現・食品香粧学科)ではこのような動きに対応するため、平成5年ころからビールの醸造研究を始めていました。沖縄のオリオンビールの技術指導を受け、地域の原料(大麦、小麦など)を用いた醸造研究に一定の成果が見られたことから、本格的にビールの醸造研究を行うため試験醸造装置を設置することにしました。種々検討した結果、ブルーイングテクノロジー社(カナダ)製の100リットル規模の試験機を平成7年3月、食品加工技術センターに設置しました。

酒類は研究用であっても国税局の醸造免許がなければ製造することができません。そこで、大学なので営業免許ではなく、「ビールおよび発泡酒の試験醸造免許」の申請を行いました。法人の組織、研究組織や責任者などとともに、研究目的、予定醸造数量、設備、設置場所の図面などの書類を揃え、税務署に申請しました。試験醸造免許というのは、あくまでも試験研究用なので、飲むことは禁じられています。また、余ったからといって廃棄することもできません。必要以上に醸造してはいけないからです。では、できた製品はどのように扱うかというと、分析に使用するということになります。税務署の担当官は、大学で1回に100リットルも研究用に醸造する必要があるのか、ということを言われましたが、実際の地ビール会社の醸造規模はその10倍から20倍の1〜2キロリットルですので、本製造前の試験規模としては最も適している量ということになります。また、できたビールは保存中の試験なども必要ですし、その必要性などを説明し理解していただきました。また、もう1つの問題は「飲んではいけない」ということです。ビールは清酒の利き酒とは違い、「喉ごし」ということも大変重要です。「官能検査」ということも立派な分析であるということを説明しましたが、当初は許可が出ませんでした。この件については後になって、大学でのいろいろな取り組みを理解していただき、一般の人ではなく研究に従事している限られた人なら「官能検査」ということで、飲むことが許可されました。

このように、試験研究免許を取得するには大変でしたが、平成7年6月に「年間ビール300リットル、発泡酒200リットルの試験醸造を認める」という免許を取得しました。これにより、ビール、発泡酒の本格的な醸造研究や地ビール会社からの委託試験などができるようになり、種々の醸造試験を行うことになりました。このような醸造研究ができる大学は日本国内では他に例がなく、学部の大きな特徴となっています。

 

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