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ニュースリリース

バイオサイエンス学科 尾畑 やよい教授の研究成果「卵子の遺伝子機能解析システムを開発」がJournal of Reproduction and Development 2021年最優秀論文賞を受賞しました。

2022年12月5日

教育・学術

 バイオサイエンス学科 尾畑 やよい教授の研究成果「卵子の遺伝子機能解析システムを開発」が Journal of Reproduction and Development 2021年最優秀論文賞を受賞しました。

 本研究はバイオサイエンス専攻の大学院生 高岡 沙綾さん(2018年度修了)およびバイオサイエンス学科博士研究員 佐々木 恵亮さん(現 群馬大学)と共に実施し、科研費(新学術領域「配偶子インテグリティ」18H05547)の助成を受けて実施しました。2022年9月に論文賞授与式に出席しました。

研究概要

 マウスやヒトのゲノム配列解読が終了しておよそ20年が経過しましたが、遺伝子の機能はまだ十分には理解されていません。いわゆるノックアウトマウスは全身で遺伝子の機能を喪失させ、遺伝子の機能を解析するために作製されますが、マウスが誕生する前に死んでしまう場合も少なくありません。その結果、出生後の遺伝子の機能を解析することができなくなってしまいます。これを回避するために、マウスでは、特定の組織でのみ遺伝子の機能を欠損する条件付きノックアウトという技術が広く用いられています。しかし、条件付きノックアウトマウスを生み出すには複数系統の遺伝子改変マウスを用いた複雑な繁殖を繰り返さねばならず、非常に多くの労力と時間がかかってしまうという問題がありました。

 今回私たちは、より迅速かつ簡便に卵子特異的に遺伝子機能を破壊する(ノックダウン)システムの開発に成功しました。マイクロRNAという遺伝子の働きを阻害する小さなRNAに着目し、機能を知りたい遺伝子(標的遺伝子)に対する人工的なマイクロRNA配列を卵子でだけ発現するマウスをゲノム編集技術を利用して作り出したところ、卵子において標的遺伝子の働きを阻害できることがわかりました。一方で他の臓器ではノックダウンが起こらなかったため、遺伝子ノックダウン効果は卵子特異的であることが証明されました(図1)。この卵子特異的遺伝子ノックダウン法の大きな特徴はマウスの繁殖がシンプルで、用いる動物数が格段に少ない点、複数の遺伝子のノックダウンが同時に行える点です。既存の条件付きノックアウトと比較して約4倍の効率でノックダウンマウスが得られ、動物愛護の観点からも有効な遺伝子解析法であると言えます。さらに、この方法は他の臓器や組織にも応用できると考えられるため、今後の遺伝子研究における選択肢のひとつになることが期待されます。

  • 本研究の成果はJournal of Reproduction and Development(https://doi.org/10.1262/jrd.2020-146)に掲載されています。

図1 研究のイメージ

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