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【研究成果(共同)】長野県木曽地方に伝わる無塩発酵漬物「すんき」を作り出す乳酸菌群集の働きをゲノム情報と有機酸から解析 | 分子微生物学科 西田 暁史 助教ら

2026年10月30日

教育・学術

長野県木曽地方に伝わる無塩発酵漬物「すんき」を作り出す
乳酸菌群集の働きをゲノム情報と有機酸から解析

概要

東京農業大学 分子微生物学科の西田 暁史 助教らの研究グループは、木曽町地域資源研究所などと共同で、無塩の伝統発酵漬物「すんき」に含まれる有機酸や微生物のゲノム情報を組み合わせてデータ解析することで、すんきを作り出す乳酸菌群集の働きを明らかにしました。高品質なすんきでは基盤となる乳酸菌Limosilactobacillus fermentumに加え、特定の乳酸菌が共優占してバランスを保ち、ホモ乳酸発酵とヘテロ乳酸発酵が相乗的に機能して乳酸や酢酸などの有機酸を蓄積していることを明らかにしました。さらに、コハク酸の生成と低pH環境での生存に寄与する代謝メカニズムである「GABAシャント」の関与も提唱しました。本研究成果は、2026年10月20日、国際学術誌「Microorganisms」に掲載されました。

1.    背景
長野県木曽地方の「すんき」は、赤カブの葉や茎を無塩で乳酸発酵させた伝統的な漬物です。近年、減塩志向の高まりから無塩発酵が世界的に注目を集めています。しかし、塩による腐敗防止効果がない環境下で、乳酸菌がどのように極度の酸性ストレスに適応し、品質の決め手となる有機酸(乳酸、酢酸、コハク酸など)を豊富に蓄積するのか、その群集全体としての詳細な代謝メカニズムは解明されていませんでした。

2.   研究手法や研究成果
研究グループは、長野県木曽町で開催される「すんき品評会」に出品された直近3年分(2023年〜2025年)、計98サンプルのすんきを対象に、有機酸濃度の測定とショットガンメタゲノム解析を実施し、以下のことを明らかにしました。

【高品質なすんきを特徴づける乳酸菌の共優占】b品評会入賞サンプルの多くが含まれる、有機酸(乳酸、酢酸、コハク酸)が豊富でpHが低い高品質なグループでは、基盤となる乳酸菌 Limosilactobacillus fermentum が単独で優占するのではなく、風味の形成や保存性に寄与する他の有用な乳酸菌が共優占し、群集としてのバランスを保っていることが分かりました。

【ホモ・ヘテロ乳酸発酵の相乗効果】
この共優占状態により、保存性を高める乳酸を生成する「ホモ乳酸発酵」と、複雑な風味をもたらす酢酸を生成する「ヘテロ乳酸発酵」の双方が群集全体で相乗的に働き、豊かな有機酸の蓄積が実現されていることが示されました。

【コハク酸生成のデュアルパスウェイと代謝スイッチ】
すんきの旨味成分であるコハク酸の生成経路について、赤カブ由来のリンゴ酸を利用する経路(還元的TCA回路)に加え、アミノ酸の一種であるグルタミン酸を利用する「GABAシャント」が機能するという「デュアルパスウェイモデル」を提唱しました。特に、特定の酵素(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)の遺伝子ポテンシャルが低下することで、代謝の流れがGABAシャントへと切り替わる「生態学的スイッチ」が働き、これがコハク酸の蓄積に寄与するとともに、低pH環境下での乳酸菌の生存にも寄与していることが示唆されました。

3.   期待される効果、今後の予定
本研究は、高品質な無塩発酵食品の品質や安全性、風味が、単一の細菌ではなく、複数の乳酸菌による生態学的な共優占と代謝ネットワークによって形成されていることを示しました。今後は、メタトランスクリプトミクスやメタボロミクスを統合した時系列解析を行い、今回提唱された代謝経路の動態をより詳細に実証することで、無塩乳酸発酵プロセスの最適化に向けた基礎知見となることが期待されます。

1.    発表者
【生命科学部 分子微生物学科 バイオインフォマティクス研究室】 
大島 旦(修士1年・共同筆頭著者)、関口 蒼菜(修士1年・共同筆頭著者)、藤田 直也(卒業生)、吉田 花(卒業生)、山田 幸香(修士2年)、藤田 信之(客員教授)、志波 優(准教授)、田中 尚人(教授)、西田 暁史(助教・責任著者)
【応用生物科学部 醸造科学科 調味食品科学研究室】
辻 聡(准教授)
【木曽町地域資源研究所】
内川 翔吾(研究員)、岡田 早苗(所長)

2.   論文情報
論文名:Shotgun Metagenomics Reveals Systemic Metabolic Pathways Promoting Organic Acid Production in Traditional Sunki Fermentation

著者名:Asahi Oshima (co-1st), Sona Sekiguchi (co-1st), Shogo Uchikawa, Naoya Fujita, Hana Yoshida, Sachika Yamada, Nobuyuki Fujita, Yu Shiwa, Akira Tsuji, Naoto Tanaka, Sanae Okada, and Akifumi Nishida (correspondence)

雑誌名:Microorganisms

DOI:https://doi.org/10.3390/microorganisms14102395

公表日:2026年10月20日

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