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ニュースリリース

【研究成果(共同)】腸内細菌叢の乱れが食品添加物による腸の炎症を増強 | 食品安全健康学科 岩槻 健 教授ら

2026年7月17日

教育・学術

腸内細菌叢の乱れが食品添加物による腸の炎症を増強
―アルミニウム含有食品添加物による腸上皮細胞死と好酸球性炎症―

ポイント

  • ・アルミニウム含有食品添加物であるアルミニウムアンモニウム硫酸塩(AAS, アンモニウムミョウバン)が、腸上皮細胞死を誘導することを明らかにしました。
  • ・この反応は、抗菌薬により腸内細菌叢が乱れた状態で増強され、腸管への好酸球浸潤も促進されました。
  • ・低用量ヘパリンは、AASによる腸上皮細胞死関連分子の活性化と好酸球浸潤を抑制しました。
  • ・腸内細菌叢の乱れを背景とした腸上皮障害や好酸球性炎症の発症機構を理解するうえで重要な知見であり、予防や治療につながることが期待されます。

概要

日本医科大学大学院 微生物学・免疫学の若林 あや子 講師、森田 林平 大学院教授、東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科の岩槻 健 教授らの研究グループは、アルミニウム含有食品添加物であるアルミニウムアンモニウム硫酸塩(AAS:アンモニウムミョウバン)が、腸内細菌叢の乱れた状態で腸上皮細胞死を増強し、腸管への好酸球浸潤を促進することを明らかにしました。

本研究では、抗菌薬により腸内細菌叢を撹乱したマウスモデルと培養腸上皮細胞を用い、AASが腸上皮および腸管免疫に及ぼす影響を解析しました。その結果、AASは腸上皮細胞の炎症性細胞死を誘導し、この反応は腸内細菌叢の乱れた状態で増強されることが分かりました。また、低用量ヘパリンはこれらの反応を抑制しました(図1)。

本研究は、食品添加物の通常摂取が直ちに疾患を引き起こすことを示すものではありません。一方で、腸内細菌叢の乱れを背景とした腸上皮障害や好酸球性炎症の発症機構を理解するうえで重要な知見であり、予防・治療法の開発につながることが期待されます。本研究成果は、2026年7月1日に「Cell Death Discovery」誌にオンライン掲載されました。

図1 腸内細菌叢の乱れを背景としたAAS誘導性腸上皮障害と好酸球性炎症の模式図

背景

腸内細菌叢の乱れは、腸のバリア機能や免疫応答に影響し、食物アレルギーや好酸球性消化管疾患などの発症に関わると考えられています。しかし、そのような状態で食品添加物などの外来因子が腸にどのような影響を与えるのかは、十分に明らかになっていませんでした。

そこで本研究ではアルミニウム含有食品添加物であるAASに着目し、腸内細菌叢が乱れた状態で腸上皮細胞死や好酸球性炎症がどのように誘導されるのかを調べました。

研究成果

本研究では、抗菌薬により腸内細菌叢を撹乱したマウスモデルと培養腸上皮細胞を用いて、AASが腸上皮および腸管免疫に及ぼす影響を解析しました。

その結果、AASは腸上皮細胞死を誘導し、この反応は腸内細菌叢が乱れた状態で増強されることが分かりました。また、腸管への好酸球浸潤も促進され、腸上皮障害と好酸球性炎症が関連して生じる可能性が示されました。

培養腸上皮細胞では、AASにより炎症性細胞死に関わる分子が活性化しました。さらに、低用量ヘパリンはAASによる腸上皮細胞死関連分子の活性化と腸管への好酸球浸潤を抑制しました。

以上より、腸内細菌叢の乱れは、AASによる腸上皮障害と好酸球性炎症を増強する可能性が示されました。

社会的インパクト

食品添加物の生体への影響は、摂取量だけでなく、腸内細菌叢や腸上皮の状態によっても変化する可能性があります。本研究は、腸内細菌叢の乱れという背景が、食品添加物に対する腸上皮の感受性を高める可能性を示しました。

本成果は、食物アレルギーや好酸球性消化管疾患など、腸上皮バリア障害を伴う消化管炎症性疾患の病態理解に貢献すると期待されます。ただし、本研究は食品添加物の通常摂取が直ちに疾患を引き起こすことを示すものではありません。

今後の期待

今後は、AASによる腸上皮細胞死の詳細な分子機構や、腸内細菌叢・食事成分との関連をさらに明らかにすることが課題です。

これらの研究を進めることで、腸内細菌叢の乱れを背景とした腸上皮障害や好酸球性炎症の発症機構の理解が進み、腸上皮細胞死を標的とした新たな予防・治療戦略の開発につながる可能性があります。

用語説明

  1. アルミニウムアンモニウム硫酸塩(AAS):アンモニウムミョウバンとも呼ばれるアルミニウム含有食品添加物。ベーキングパウダーなどの膨張剤の酸剤として用いられることがあるほか、食品の色調や形状を保つ目的でも使用されます。本研究では、腸内細菌叢の乱れた状態における腸上皮への影響を解析しました。
  2. 腸内細菌叢:腸内に存在する多様な細菌の集まり。腸のバリア機能や免疫応答の調節に関与します。
  3. 腸上皮細胞死:腸の表面を覆う腸上皮細胞が障害を受けて死に至る現象。バリア機能の低下や炎症に関わる可能性があります。
  4. 好酸球性炎症:好酸球という白血球が組織に集まり、炎症に関与する状態。食物アレルギーや好酸球性消化管疾患との関連が知られています。
  5. ヘパリン:血液凝固を抑える薬剤として知られる物質。本研究では、低用量ヘパリンがAASによる腸上皮細胞死関連反応や好酸球浸潤を抑制することを示しました。

論文情報

掲載誌:Cell Death Discovery
論文タイトル:Aluminium ammonium sulphate induces epithelial pyroptosis and eosinophilic inflammation under dysbiotic conditions: ameliorative effects of heparin
著者:Ayako Wakabayashi*, Atsuko Owaki, Ken Iwatsuki, Etsuko Toda, Keisuke Tanaka, Soichiro Kumamoto, Yuichi Koshiishi, Yukino Machida, Shinobu Kunugi, Yasuhiro Nishiyama, Shoji Matsune, Yasuyuki Negishi, Rimpei Morita*
(*責任著者)
DOI:10.1038/s41420-026-03237-1

研究グループ

本研究は、日本医科大学大学院微生物学・免疫学の若林 あや子講師、森田 林平大学院教授、東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科の岩槻 健 教授らを中心に、日本医科大学共同研究施設形態解析研究室、同大学大学院人体解析病理学、東京農業大学生物資源ゲノム解析センター、日本獣医生命科学大学などとの共同研究により実施されました。

研究支援

本研究は、東京農業大学生物資源ゲノム解析拠点の共同研究、および日本学術振興会 科学研究費助成事業、文部科学省 科学技術人材育成費補助事業 ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型・女性リーダー育成型)、日本食品化学研究振興財団、内藤記念科学振興財団、第一三共生命科学研究振興財団、上原記念生命科学財団、武田科学振興財団、テルモ生命科学振興財団の支援を受けて実施されました。

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