研究成果「北海道在来豆の特性が明らかに」 | 食香粧化学科 中澤 洋三 教授ら
2025年4月4日
教育・学術
「煮豆のおいしさ」に科学のメス
北海道在来豆の特性が明らかに
~食物繊維とデンプンが煮豆の食感を左右する、その正体とは?~
研究概要
食香粧化学科 中澤 洋三 教授らは、北海道で古くから栽培されている在来種の豆類(雑豆)について、食物繊維やデンプンの含量が煮豆の食感にどのような影響を及ぼすかを科学的に分析しました。
本研究では、北海道産の在来豆を含む20種類の豆類について、ペクチン・セルロース・ヘミセルロースなどの食物繊維、および難消化性・消化性デンプンの含有量を測定。そのうえで煮豆に加工し、硬さ・粘り・ガム性(ねっとり感)などの物性を測定し、相関関係を統計的に解析しました。
その結果、ペクチンが多い豆は煮たときにねっとり感(ガム性)やまとまり(凝集性)が高くなる傾向にあり、セルロースや難消化性デンプンが多い豆は逆にまとまりが低く、弾力性も下がる傾向があることが分かりました。
社会的意義・応用可能性
豆類は、日本の伝統的な食文化を支える重要な作物です。特に北海道は、豆類の一大生産地であり、地域資源としての価値が高まっています。しかし、在来豆の多くは品種としてのデータが少なく、食品加工への応用が限定的でした。
今回の研究により、「どの豆がどんな煮豆に向いているか」が明確になり、今後の食品開発や伝統食品の再評価に大きく貢献することが期待されます。たとえば、ガム性の高い豆を使って「ねっとり系の甘煮」、逆に弾力の高い豆で「しっかり食感のお惣菜」など、目的に応じた煮豆のレシピ設計が可能になります。
さらに、難消化性デンプンの多い豆は腸内環境の改善にも役立つ「レジスタントスターチ」としても注目されており、健康志向の加工食品への応用も期待されます。
今後の展望・課題
研究チームは今後、これらの知見をもとに、在来豆の「食感データベース」構築を目指します。これにより、農業者、食品メーカー、料理研究者が連携しやすくなり、新たな商品開発や品種改良が加速するでしょう。
また、豆類の高付加価値化によって地域農業の活性化にもつながることが期待されます。古くて新しい在来豆の可能性が、科学の手でさらに広がろうとしています。
【論文情報】
論文タイトル:北海道産在来豆の食物繊維含量およびデンプン含量とそれら煮豆の物性との関係
英文タイトル:Relationship between dietary fiber and starch contents and physical properties of conventional beans from Hokkaido
著者名:中澤洋三*・坂場真希・宮下慎一郎・南和広・相根義昌
所属:東京農業大学生物産業学部食香粧化学科
掲載誌:日本食品保蔵科学会誌 Vol.51