研究成果「世界自然遺産・小笠原諸島から新種のカメムシを発見」
2023年2月9日
教育・学術
東京農業大学大学院の嶋本習介博士課程学生らの研究チームは、世界自然遺産に登録されている小笠原諸島から新種のカメムシを発見し、「オガサワラシロヒラタカメムシ」と命名しました。この成果は2023年2月7日に、国際学術誌「Zookeys」の電子版に掲載されました。
小笠原諸島には独自の進化をとげた固有の生物による特異な生態系が存在し、2011年には世界自然遺産に登録されています。本研究チームは、小笠原諸島の父島と、無人島である兄島、弟島で調査を行い、正体不明のカメムシを発見しました。そこで、このカメムシの形態を観察した結果、ほかの種とは顕著に異なる新種であるという結論に至りました。そのため、この種を「オガサワラシロヒラタカメムシ」(学名:Nesoproxius kishimotoi、読み:ネソプロキシウス キシモトイ)と命名しました。この新種は、翅が短く飛ぶことができないという特徴を持つ変わったカメムシです。絶海の孤島である小笠原諸島で長い期間隔離されたことによって、飛ばなくなるという進化をした可能性があるため、進化学の観点からも注目すべき種だと考えられます。
このグループ(属)の新種の発見は日本初であり、世界的にも1983年以来40年ぶりの研究成果です。また、本種のように小笠原諸島で独自の進化をした可能性のある種は、同諸島の生態系の価値を証明する存在です。そのため、今回の発見は、世界自然遺産としての小笠原諸島の資産価値を高めうる重要な成果といえます。そして、これらの種の生存を脅かす外来生物の対策が、今後も必要であると考えられます。
図1. 新種オガサワラシロヒラタカメムシのオス成虫の標本と生体(嶋本習介 撮影)
発表のポイント
- 小笠原諸島から新種のカメムシを発見し、「オガサワラシロヒラタカメムシ」と命名した。
- この新種は、日本の海洋島である小笠原諸島で「飛ばなくなる」という独自の進化をした可能性がある。
- 本種の存在は、小笠原諸島の生物多様性の進化学的価値を証明する重要な成果である。