生物資源開発学科
厚木キャンパス
学科紹介
植物、動物、昆虫から生薬まで「生命の不思議」を幅広く探究
「生物多様性」をキーワードに、生き物や自然に関する幅広い学びに触れられる学科です。特徴は、「植物」「動物」「昆虫」という3 分野を1 学科で学べること。生物を理解し活用するためには、彼らの生息する自然環境やその関連する生態系を正しく把握する必要があります。
例えば、「生物多様性管理分野」の研究室では、希少植物の保全、野生動物の家畜化、農業に役立つ昆虫の探索といった研究が進められています。研究のフィールドは日本国内だけでなく、海外にも及んでいて、マレーシア・ボルネオ島でオランウータンをはじめとする希少動物たちの生態系保全の研究にも取り組んでいます。
国内外での昆虫の調査も盛んで、東京農大がこれまでに発見した新種の昆虫は、1000種以上にのぼります。植物、動物と一緒に昆虫を学べる環境は珍しく、近年は昆虫を研究対象とする女子学生も増えています。希少植物や、絶滅が危惧される野生動物の生息域内外での保護・保全、新種昆虫の探索・発見など、実践的なフィールドワークが、高度な判断力や問題解決能力を養います。
一方、生物資源利用分野の研究室では、農学的視点から研究成果の社会実装に取り組んでいます。例えば、漢方生薬の国内生産。優れた薬効を持つ植物も、適切な条件が整わなければ薬効成分を作りません。原産地での調査にはじまり、栽培実験や種子生産まで、薬学部ではカバーしきれない領域に取り組んでいます。また近年、ゲノム解析技術が進歩したことで、葉のかたち、風味、食感といった種や品種の持つ特徴を遺伝子レベルで理解できるようになりました。ゲノム情報を活用することで、遺伝子組み換え技術に限らず、生物の力を自在に制御し、品種開発を効率化する技術の開発に取り組んでいます。先端科学で生物に秘められた力を引き出すことが、これからの持続可能な農業、環境、社会づくりに必要不可欠なのです。
学科長メッセージ
生物資源開発学科は、この問題に取り組むべく、植物・動物・昆虫を柱とし、「生物多様性管理分野」と「生物資源利用分野」の2分野からアプローチして生き物について広く学び、考えるチカラの習得を目指しています。生物多様性管理分野では、生き物の本質を理解すため、分類、分子レベルから行動、生態、さらに生き物の保全・管理について学びます。生物資源利用分野では、生物資源の持続的な利用を目指し、有用な資源の探索、品種の選定、生産方法などを学びます。
本学初代学長 横井 時敬先生の言葉に「土に立つ者は倒れず。土に活きる者は飢えず。土を護(まも)る者は滅びず。」があります。「土」は広く捉え「自然」や「生態系」に言い換えてみると、本質に立ち戻り真摯に取り組めば、困難な問題であっても、何れはそれを乗り越えることができることを示しています。本学科には生き物好きが多く集まります。大学で過ごす4年間は短く、一方で人生の中でとても貴重で大切な時間です。そのかけがえのない時間を仲間と過ごし学び、私たちと共に自然と生き物について考えてみませんか。
学科長 菱田 敦之
受験生向けのイベント情報
学科紹介、進学相談など受験生向けのイベントをお知らせします。予定は変更される場合があります。
随時、進学相談や施設見学に対応致します。詳しくはこちらをご確認ください。厚木キャンパスへのアクセス情報はこちらでご確認ください。
プレスリリース・メディア・その他 お知らせ
学科の特徴
生き物好きによる、生き物好きのための学科
学生の声
水族館で見た水棲哺乳類のジュゴンとマナティーに魅了され、絶滅の危機から救うため保護や保全をしたいと思っていました。様々な大学を調べましたが、希望の水棲哺乳類を研究しているところがなく、唯一、本学科の野生動物学研究室で「やってみたら」と言われ、進学を決めました。本学科では植物、動物、昆虫と幅広く学べるところが魅力です。例えば、植物を学ぶことで、ジュゴンやマナティーの餌となる海草や水草の種類や特徴が分かります。入学前は動物にしか興味がなかったのですが、視野が広がり、結果的にジュゴンたちの生息環境への理解も深まりました。多様な生物について学んだことや、各自が好きな対象物について驚くほど詳しい友人たちとの出会いを通じて、水棲哺乳類の保全だけでなく、環境への人々の意識を変えることの大切さに気づきました。学科で広がった視野を活かし、よりよい地球環境をつくる仕事に携わりたいです。
2023年度卒╱Iさん ╱環境省に就職
学生の声
幼い頃から自然や生物に関心があったため、キャンパスに植物園もある緑豊かな環境で学ぶ農学部に大きな魅力を感じました。高校時代はどの分野で何を研究したいのか、まだ漠然としていましたが、本学科は生物多様性を基盤に、植物、動物、昆虫、生薬など、全て学べることを知り選択しました。多様な生物が生息する自然環境や生態系の研究など、幅広く取り組んでいます。3 年次からは「遺伝資源利用学研究室」に所属し、遺伝資源として重要である大根に着目し、日本の市場で大半を占める青首大根を、根の全面が白い白首大根に品種改良することを目的とした遺伝子の研究を行っています。入学前にイメージしていた通り、生物多様性をキーワードとする本学科は学びの領域が多彩です。2 年次に参加した上野動物園における体験実習も非常に印象に残っています。動物、植物をはじめとする生命の不思議に広く触れながら、先端技術を用いた遺伝子の研究に取り組む中で、自分自身の視野や考え方が広がりました。卒業後は食品業界への就職を志望しています。将来は海外で働き、研究活動で得た知識・技術を活かして、飢餓や貧困問題の解決に寄与していきたいと考えています。
生物資源開発学科 3年 (2020度)╱M. N. さん
学生の声
小さい頃から生物に興味があり、大学進学に際しても生物学科を志望していました。私は様々な生物を学びたかったので植物、動物、昆虫などを広く研究できる東京農業大学を選びました。生物の生態や遺伝子など沢山の面白い知識を吸収しています。今は薬用植物を中心に勉強しています。3 年次からは、薬用資源学研究室に所属して漢方医学や薬用作物の研究を始めます。私の夢は、植物から抗マラリア薬となる有効成分を抽出することに成功して人々を救い、ノーベル賞を受賞した屠 呦呦のような人になることです。私も製薬の道に進みたいと考えています。
生物資源開発学科 2年 (2019年度)╱I. O. さん (中国からの留学生)
学生の声
東京農大を選んだのは、魅力的な研究室があったから。昆虫学を学びたくていろいろな大学の研究室を調べたところ、生物資源開発学科の昆虫学研究室が一番、分類生態分布など広い分野の研究を行っていると知りました。1 年生のため研究室にはまだ所属していませんが、実習で昆虫採集をして、大学院生の方と興味深い話がたくさんできたときは、あらためて東京農大の良さを感じました。また、農学部共通の農業実習では、さまざまな学科の学生と一緒に実習をして、農作物や畜産など自分の専攻とは異なる分野についても学ぶことができました。東京農大は知識が豊富でユニークな考えを持っている学生が多いと感じます。これからも積極的に交流範囲を広げて、将来の仕事に活かせる知識や経験を得ていきたいです。将来の夢は自然保護官になることです。
生物資源開発学科 1年 (2018年度)╱Y.S.さん(千葉県出身)
学科から受験生へのメッセージ
~面白いことを追究すれば、仕事は後から付いてくる~
特色ある取り組み
山梨県『小菅村』プロジェクト
研究室横断型の取り組みとして、山梨県小菅村を舞台に様々な活動を展開しています。野生動物学研究室をはじめ生物多様性分野の研究室は生態系調査を、薬用資源学研究室は薬草栽培、遺伝資源利用学研究室は特産物であるワサビの在来種の保全等に取り組んでいます。
アイランドスタディーツアー
1, 2年次学生が教員の調査研究に同行し、野外調査を体験できる「アイランドスタディーツアー」を実施しています。沖縄県の西表島や宮古島を対象とした「植物・昆虫・動物の多様性を指標とした島嶼農業生態系の評価と保全」等の研究に同行します。第1回目のツアーは沖縄県西表島で実施しました。現地では、昆虫の調査や、植生の調査等を行います。
シリーズ:資源の森
生物資源、生物多様性、環境保全などの分野で活躍している著名な方を講師として招き、ご自身の研究成果や実績をわかりやすく紹介いただく特別講義を「シリーズ:資源の森」と題し行っています。初年度は、屋久島の世界自然遺産登録に深く関わった元環境省自然保護局長の小野寺浩先生、イリオモテヤマネコ研究の第一人者である安間繁樹先生にご講演頂きました。
海外協定校への派遣
東京農業大学ではグローバル連携センターの支援の下、32ヶ国44校の協定校への留学を行うことができます。2023年度は遺伝資源利用学研究室の学生が1年間マレーシア・プトラ大学へ留学しました。
活動報告
アイランドスタディツアー等学科の取り組みに関する活動記録を紹介します。
教員・研究室紹介
生物多様性管理分野の研究室では動植物・昆虫の生態や分類、保全等について研究を行っています。一方で生物資源利用分野の研究室では、薬用植物や生物の多様性を活用した品種改良等に関する研究を行っています。
生物多様性管理分野
生物資源利用分野
研究室コンテンツ (ジャーナル, ブログ, SNSなど)
研究ピックアップ
資金提供を受けて実施されている主な研究を紹介します
薬用植物
の栽培
薬用植物の国産化・品質向上に向けた栽培技術の開発
薬用植物は漢方薬やハミガキ粉、シャンプーなどの原料として使用されています。日本で消費される生薬の約9割を輸入品に頼っています。これまで生薬は、大きな価格変動目なく中国から安定供給されてきましたが、中国国内での消費が急増したことにより価格が高騰し入手が困難になっています。本研究では、生薬の安定供給を目的に、薬用植物の自給率向上をめざし、日本国内での栽培方法確立に向けて研究を進めています。
日本医療研究開発機構 創薬基盤推進研究事業 菱田 敦之
多様性の
解明
レタスの結球のしくみを明らかにする
レタスやキャベツ、ハクサイに見られる"葉の玉"は、イモやタマネギと同じ栄養貯蔵のための形態です。結球は栽培種にのみに見られる特徴的な形態ですが、なぜあのようなかたちができあがるかは、よく分かっていません。私たちは、結球できなくなったレタス遺伝資源を活用し、ゲノム科学的手法で結球ができあがる仕組みを調べています。
日本学術振興会 基盤研究 研究代表者 小松憲治
遺伝資源
の利活用
ダイコンを現代の技術でデザインする
近年、ゲノムをピンポイントで書き換える「ゲノム編集」技術が発展したことにより、医療や品種改良の幅が大きく広がりました。植物でゲノム編集を行うためには、編集を行った細胞を培養し、個体にまで再生される必要があります。ダイコンの組織培養は比較的難易度が高く、まだゲノム編集の事例がありません。私たちは、玉川大学、世田谷キャンパスバイオサイエンス学科、農研機構と共同で、ダイコンのゲノム編集技術を確立し、ダイコンの抽だい、辛味成分などの形質を改変する研究に取り組んでいます。
農林水産省委託プロジェクト 分担者 三井裕樹、小松憲治
保全活動
大型動物研究を軸とする熱帯生物多様性保全の国際研究拠点
熱帯雨林は陸地面積の7%に満たないにもかかわらず、全生物種の半数近くが生息する生物多様性の著しく高い地域です。しかし現在、熱帯雨林とそこに生息する野生動物は、乱開発や乱獲によって急激に失われています。その問題解決には当事国だけではなく、関係諸国が協力して取り組むことが必要です。そこで私たちは、ボルネオ島マレーシア・サバ州での共同研究ならびに人材育成を通じて、生物多様性と生態系の保全を目指します。
日本学術振興会 研究拠点形成事業 分担者 松林尚志
研究成果
トピックス
講演会映像・研究コラム
教員著書・翻訳・監修本 PICK UP
学科教員の日本語の一般図書や監修本、翻訳本を中心にピックアップ
授業 PICK UP
生物を理解するために植物、動物、昆虫の生態から進化、遺伝子レベルまで。履修できる科目の種類は多岐に渡ります。実習科目では、生物たちが生息する自然環境や関連する生態系を正しく理解するためにフィールドワークを重視しています。さらに生物の持つ能力を活用し、実社会で活かすために分子生物学や生命工学 (遺伝子工学等) の授業を通じて、最新のバイオテクノロジーを学ぶことができます。
2年次
必修
野生動物学
野生動物は、生態系の構成員ならびに資源として重要な存在です。そんな野生動物の中には、人間活動の影響によって絶滅の危機に瀕したり、増え過ぎたりしている種、また資源価値の高い種がおり、適切に保全や管理、利用していくことが求められています。本科目では、野生動物の生態的・資源的な意義を軸として、野生動物と人間との関わり方について学びます。
2年次
必修
昆虫学
昆虫は人や農業と深い関わりを持っています。農業害虫として知られる種も多く、その制御は生産性の向上に欠かせません。反面、天敵として利用される昆虫や、ミツバチやカイコのように資源として利用されるものもいます。本科目では、このような昆虫の形態や生態といった昆虫に関する基礎知識を習得すると共に、農業や自然生態系における昆虫の役割を学びます。
2年次
必修
薬用資源学
薬用植物を医薬品として利用するために加工したものを「生薬」と呼びます。薬用植物の栽培では農薬の使用が厳しく制限され、また最終生産物が日本薬局方の基準を満たしている必要があるなど、一般農作物の栽培生産とは大きく異なります。本科目では漢方やハーブ療法を始めとする世界の伝承医学で利用される生薬の種類や、生薬生産の現状と課題について学びます。
2年次
必修
植物多様性学
地球上のほとんど全ての生物は、多様な植物がつくりだす環境や資源によってその命を支えられています。しかし、多くの人にとって植物は動物ほど馴染みがなく、植物に関する知識は限られています。本科目では、植物の形態、生態、系統、進化、遺伝子など植物学の幅広い知識を習得し、私たちの身の周りにあふれる植物の種類や生存戦略、資源としての価値や保全について学びます。
1年次
必修
遺伝資源利用学
人間の生活の基礎となる「衣食住」は様々な生物資源の利活用によって成り立っています。農業生物のもつ有用遺伝子のみならず、生物の有する遺伝情報全体が将来的に利用可能な遺伝子素材であることから、生物自体の遺伝資源としての価値とその利活用の重要性が国際的に認識されています。本科目では主として植物遺伝資源の保全と利活用の現状並びにそれらに関する国際条約等について学びます。
2年次
必修
生物学実験
4 年次の卒業論文研究では、生物に対する観察力に加え、観察された生命現象を正しく記録し、表現する力が求められます。本科目では、昆虫や動植物の外部形態から細胞内小器官の観察、DNA 分析やコンピュータを活用した遺伝子解析を行い、生物学の基礎的な知識、技術、観察力を学びます。また実験実習を通じて、実験器具の扱い方を習得するとともに、実験記録作成法や文章表現力を学びます。
キャンパスPICKUP
厚木キャンパスについて
東京農業大学 厚木キャンパスは小田急線本厚木駅からバスで約15分と、都心部の駅チカのキャンパスと比べると立地がよいとは言えません。一方で、キャンパスが小さな丘の上にあり、周りは緑に囲まれ、キャンパス内や周辺で動植物・昆虫の調査研究が可能であるといった生物・生態系を学ぶには魅力的な環境となっています。隣接するぼうさいの丘公園を含めると広大な自然が広がっています。また厚木市は神奈川県央を代表する大きな街で、駅周辺には便利な商業施設があります。コロナ禍でテレワーク化が進む中、首都圏版住みたい街ランキングで本厚木駅が第1位にランクインするなど自然と利便性を兼ね備えた街として注目されています。 厚木キャンパスへのアクセス・キャンパスマップ 住みたい街ランキング(首都圏版)本厚木駅が第1位にランクイン (厚木市)
卒業後の進路
就職先の展望
世界中で多くの企業・団体が環境保護の取り組みを進める中、多様な生態系を理解し、保全と活用の両立を実現するエキスパートの活躍が求められています。卒業後は、国内外にかかわらず「環境」をテーマとする幅広い分野での活躍が期待されます。
1. 生物多様性の重要性を社会に伝える人として活躍
教育者、学芸員などの立場から、生物多様性の重要性を社会に啓蒙し自然の保全と活用に理解のある次世代を育成
2. 環境に配慮した持続的社会作りに携わる人として活躍
行政・民間の立場から生態系に配慮した社会作りの立案と実施に貢献
3. 生物資源を有効に活用した豊かな社会作りに関わる人として活躍
民間の資本と生物資源を活用し、農業、医薬・食品産業を通じて健康で安全な社会作りに貢献
予想される進路
- 国家公務員
- 地方公務員(上級職)
- 教員(理科、農業)
- 環境コンサルタント
- 環境アセスメント
- 自然保護官
- 農業生産法人
- 動物園
- 植物園
- 博物館
- 農業および農業関連産業
- 食料品製造業
- 卸売業および流通業
- 製薬会社
- 旅行会社(自然ツアー関連)
- 出版・マスコミ など
取得できる資格
- 高等学校教諭一種免許状(理科・農業)
- 中学校教諭一種免許状(理科)
- 学芸員
- 司書
- 環境再生医(初級)
- 自然再生士補
大学院との連携 -生物資源開発学専攻-
東京農業大学大学院は、まだ大学院が旧帝大などごく一部の大学にしか設置されていなかったころから存在し、多数の農学博士を輩出してきた歴史ある大学院です。東京農業大学大学院の出身者は東京農業大学をはじめ全国の大学、研究機関、博物館等で理事、大学教授、研究員として活躍しています。本学科にも6名の東京農業大学大学院出身の教員が在籍しています。学部を卒業後、東京農業大学大学院 農学研究科 生物資源開発学専攻に進学することで、引き続き研究活動に取り組むことができます。学部3年生から研究活動を始めた場合、博士前期課程までで修了の場合で4年間継続して研究活動に取り組むことができるため、まとまった研究成果を挙げることが期待できます。また東京農業大学では、大学院への進学を希望する皆さんの応援するために、授業料の半額相当を免除する奨学金制度を用意されており、国公立大学並みの学費で大学院に通うことができます。