東京農業大学

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教員コラム

オホーツクの大地の恵みをたっぷり使用‐地産地消にこだわるパン職人‐

2016年5月1日

生物産業学部地域産業経営学科 准教授 菅原 優

オホーツクの地域資源 Foods Who(5)

パン用小麦の一大産地・オホーツク

 オホーツクというと海産物が豊富というイメージがあるが、農産物だって負けていない。
 2013(平成25)年の漁業生産高は過去5年で最高の715億7,879万円に対して、農業生産額は1,723億7,800万円となっており、地域の一次産業における農畜産物の生産ウエートは非常に高い。
 しかも、オホーツクの冷涼で雨が少ないという気候条件は、小麦を栽培する環境に非常に適している。小麦には、タンパク質含有率が高くパンや中華麺に向いた品種、タンパク質含率が中程度のうどんに向いた品種がある。製パン適性に優れた小麦粉は「強力粉」と言って、粘りと弾力のあるグルテンを形成するもととなる。この製パン適性に優れた小麦品種として、北海道で栽培面積が最大となっているのが春まき小麦「春よ恋」で、香りも良く吸水性に優れ、ふっくらとしたボリュームのあるパンに仕上がる。オホーツクはこの「春よ恋」の一大産地となっている。日本の小麦の自給率は約13%で、パン用に限れば3%程度しかない。


地産地消にこだわり地域の素材を生かすパン職人

 こうした小麦の栽培に恵まれたオホーツクの環境にほれ込み、地元の素材の使用にこだわったパンづくりをしているのが、女満別空港のある大空町でパン店「ブランジェ・アンジュ(フランス語で“天使のパン屋”)」を2003年12月に開業した平岡映二さんである。
 平岡さんは神奈川県の出身で、開業以前は東京都内のベーカリー店で働いていたが、原材料の小麦が生産されている現場を普段意識していなかったことに疑問を持ち、北海道の畑作農家(本別町の前田茂雄氏・東京農大世田谷キャンパスOB)で半年間の研修を行っている。そこで食と農を結ぶ地産地消の考えに触れ、生産現場が近い北海道でのパン店を開業することを決意するのである。
 パンづくりに不可欠な材料は小麦粉、イースト、塩、水の4つ。主原料となる小麦粉は女満別産「春よ恋」をはじめとしたオホーツク産・北海道産の小麦粉、塩は湧別町産「オホーツクの塩」、水は百名山に数えられる斜里岳に湧く「来運の水」を使用するというこだわりようである。他にも地域の素材として、牛乳は網走市・楠目牧場の「オホーツクあばしり牛乳」、卵は網走市・杉村農園の「あばしりピースたまご(有精卵)」や北見市の養鶏会社、バターは十勝発祥の乳業メーカー・よつ葉乳業のフレッシュバターを使用する等、原料は地元産・オホーツク産・北海道産に徹底的にこだわっている。
 パンの種類は20〜30種、大型のハードタイプのパンをはじめとして、食パン、メロンパン、クリームパン、くるみパン、あんパン、ソーセージパン、ブルーベリーパン、クロワッサン、りんごのデニッシュ、さくら豚のミートピザパンなど実に多様な品ぞろえとなっていて、お客様を楽しませてくれている。
 また、こうした地域の食材にこだわったパンづくりが注目されて、札幌の地下街や旭川のデパート等でも販売されるようになってきた。こうした取り組みは、地域の生産者や加工業者など地域の小企業者とのネットワークに支えられているという。オーナーの平岡さんは「地域の素材にこだわるという基本理念は変えずに、人との出会いを大事にしていきたい」と語ってくれた。



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