東京農業大学

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教員コラム

勉学への動機付けを強固に

2011年10月13日

短期大学部醸造学科 教授 舘 博

学生と教員の協働による学科横断的実学教育

少子化による大学全入時代の到来に伴って、短期大学部では、以前にもまして学生間の学力較差が大きくなっている。また、大学での勉学に対する目的意識が希薄な学生が多く入学してくるようになってきた。高校教育から大学教育へのスムースな移行には、多様な学生に対応する教育カリキュラムに変更する必要になった。

そこで、従来の教育カリキュラムを全面的に見直し、総合教育科目の拡大と専門基礎科目の充実を図ったカリキュラムの構築を行った。本カリキュラムの特徴は、(1)リメディアル教育の実施、(2)初年次教育の強化、(3)学科横断的な専門教育科目の実施、および(4)キャリア教育の充実である。さらに、短期大学部4学科が互いに協調することにより、学生が自分の専門分野の農学における位置付けを明確にし、個々の学生が自身の将来の進路を見据え、目的を持って勉学に取り組む動機付けを強固にすることを目的とした。

 

多彩なプログラムを展開

本プログラムの実施に当たっては、教員が、学生の勉学からキャリアデザインなど生活や進路設計に関する事項にいたるまで、きめ細かに指導する必要がある。そこで、短期大学部の全教員に対して、FDプログラムとして、「魅力ある講義を実施するための教授法」や「個々の学生の相談に対応するためのカウンセリング法」などの研修を行った。また、短期大学部内に「教育支援委員会」を設置して、本プログラムの計画、実施、検証、改善などを行い、より良い事業推進に努めてきた。

本プログラムの完成年度である平成22年には、3年間の集大成として下記のプログラムが実施された。

リメディアル教育科目としては、入学時に英語、生物、化学のプレスメントテストを実施し、英語は能力別クラス編成を行い、生物と化学では基礎生物、基礎化学を開講して大学教育への円滑な移行を図った。さらに学生の文章作成能力の低下を改善するために、文章表現を開講した。

初年次教育科目としては、大学での学習に対する動機付けや自身のキャリアデザインに対する意識向上を目的として、フレッシュマン演習を実施した。農大独自のテキストを作成し、さらに短期大学部共通の実施内容とするために教員用マニュアルを作成すると共に、より効率的な実施方法について検討した。さらにフレッシュマンセミナーの内容を学科間で標準化し、フレッシュマン演習と連動させることにより、効果的な初年次教育プログラムとした。

学科横断的専門教育科目として、食農体験実習やマイスターセミナー、食の安全と信頼、みどりと農業生産などを開講し、農産物の生産から消費にいたるまで生活に関わる広範な教育を、学生と教員が協働しながら進めた。学生が自分達の学びたい内容について積極的に教員と協議し、実習等の運営にも関わった。学生と教員の協働により、大学生として自ら積極的に学ぶ喜びを体感したことにより、その後の学科の専門教育における高い教育効果が期待される。さらには、学科の専門だけでなく農学に対するより広い見識を持った生産者や技術者になることが期待される。

食農体験実習は、世田谷・厚木コース【米をテーマとして、棚沢水田(厚木)での田植え・稲刈りと環境観察、味噌醸造、調理実習など実習を行なった:定員80名、土曜日×5回】、鮫川村コース【短期大学部が中心となり東京農業大学と地域連携協定を締結した福島県鮫川村での実習:定員30名、1泊2日×3回】、オホーツクコース【東京農業大学オホーツクキャンパスのある北海道網走市での実習:定員40名、3泊4日集中】及び小菅村コース【東京農業大学が文部科学省平成18年度現代的教育ニーズ取組支援プロジェクト(現代GP)で開講した多摩川源流大学(山梨県小菅村)での実習:定員40名、3泊4日集中】の4コースで実施した。計190名の学生が履修し、実習終了後に全コースによる合同実習報告会を実施した。

キャリア教育科目としては、キャリアデザインを実施し、1年生から将来の進路について考える機会を持たせた。

 

学科の枠を超えて結束

本プログラムを実施したことにより、当初の目的である多様な学生に対応した高校教育から大学教育へスムースに移行できる教育カリキュラムの構築については、一定の成果が得られたものと考えている。それにも増してこの本プログラムの遂行を機に、短期大学部の教育について改めて再検討できたことが大きな成果であった。教育支援委員会を中心に、全教員が学科の枠を超えて、教育について協議し、より良い方法を模索し、改善を加えていくことにより、学科間の垣根が低くなり教員間の結束が強くなったと感じている。

学生の学科間交流についても、学科横断的専門科目の食農体験実習では、学科の垣根を超えたフィールドでの実習やワークショップでの意見交換が大きな効果をもたらした。また、各学科の教員がフィールドで共に汗を流すことで、学生と教員との距離が縮まり、進路や成績に関すること等相談しやすい雰囲気を醸成できたと考えている。

「学生との協働」のテーマに関しては、プログラム履修学生を中心に学生委員会を組織し、プログラム内容等について、学生の立場から意見を聴取する機会を設けた。これにより、教員だけでは出なかったアイデアや要望を数多く聞くことができ、プログラム内容改善のヒントを得た。これらの意見に関し可能なものについては教育支援委員会を中心に協議を行い、プログラム内容に一部に取り入れたことで、学生の満足度・学習意欲が向上した。

本プログラムは平成22年度からの新カリキュラムとして完全実施されたもので、現在の2年生から適用されたカリキュラムである。従って、厳密に言えば2年生が卒業する平成23年度末にその真の教育効果が明確なる。この3年間、文部科学省の「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」の予算により、多くの教育改善の検討をさせて頂いたが、お陰様で短期大学教育のより良い教育プログラムが構築できたと考えている。本年度からは、文部科学省からの予算的支援は受けていないが、今後、今回構築した教育プログラムをしっかりと遂行し、さらに発展させて行かなければならないと考えている。

 

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