東京農業大学

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教員コラム

再生紙マルチシートを敷設

2010年10月15日

農学部農学科 教授 馬場 正

=学術フロンティア研究3年目=
新潟・上越で実証試験の田植え

東京農大の学術フロンティア共同研究「新農法確立のための生物農薬など新素材開発」が、水稲有機栽培の現地実証試験田んぼを新潟県上越市に設置して3年目を迎えた。5月のゴールデンウィークに相前後して、田は水を満々とたたえ、いよいよ田植えの季節に。再生紙マルチシートを敷設しながら苗が移植できる乗用田植え機が新たに使用された。

現地には、プロジェクトメンバーが直接管理する田んぼ(デモファーム)と、協力農家の田んぼがある。デモファームは、昨年から大幅に増え、2ヘクタールになった。一方、慣行栽培から化学合成資材を使わない栽培法に転換した協力農家の田んぼも、1ヘクタール程度まで拡大した。

規模拡大に対応するため、新たに採用された乗用田植え機は、6条植の乗用田植え機にマルチシート敷設用のアタッチメントをつけたものだ(表紙裏写真1参照)。田んぼ全面を覆うマルチシートは、除草剤を使うことなく雑草の発生を抑えることができる。1ロールの長さが125m、幅1.9mのマルチシートに、爪で穴を開けながら苗を移植していく。10アールあたり5ロール強を必要とし、1ロールの価格が4,000円である。1枚の田んぼが大きく、ある程度大規模に水稲有機栽培を行おうとする際に使える技術として重要で、有機JAS(日本農林規格)にも対応しているので、売り先が期待できるところでは広がる可能性を秘めている。

また、同じ再生紙マルチを使った方法でも、苗を移植するのではなく、籾を直接播いてしまおうという直播タイプもある。5㎝四方の不織布に4〜5粒の籾をサンドイッチし、これを再生紙に等間隔にあけた穴に裏側から貼り付ける。1ロールの長さが50m、幅1.6mと移植タイプのものより小ぶりで軽く、人力の敷設機でも容易に敷くことができる(表紙裏写真2参照)。こちらは10アールあたり14本必要で、価格は1本2,500円である。中山間地の機械も入れにくい小規模な泥田で威力を発揮するが、田植え機に固定して機械で敷設することもできるので、10〜20アールの田んぼでも十分使える。

再生紙マルチは敷設後50日程度で溶けてしまう。溶けた後は雑草が生えるが、その頃になるとイネの方が成長しているので問題はない。このように再生紙マルチを使った方法は高い抑草効果を発揮する。ただし水稲有機栽培で懸念される虫害などに対しては効力をもたないので、ひとつの経営体の中にたとえばアイガモ農法など複数の技術を取り入れ、それぞれの方法の長所を活かし、短所を補い合うことで、より安定した水稲有機栽培が可能になるだろう。

今年は、冬の積雪が極端に少なかったことに加えて、夏の高温少雨が予想されており、今から水不足を心配する声が強いが、どうだろうか。プロジェクトも残りあと2年。収量・品質ともに慣行栽培にひけをとらないところまでもっていけるか、正念場を迎えている。

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