東京農業大学

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教員コラム

重力の壁を超えて宇宙で暮らす日も近い?!

2010年10月15日

生物産業学部生物生産学科 教授 橋詰 良一

マウスを過重力で飼育すると?

近年の宇宙開発はめざましく、いまやスペースシャトルが宇宙から地球と交信する光景も珍しくはありません。近い将来には宇宙旅行も夢ではないでしょう。そうなれば、月に宇宙ステーションを建設し、長期滞在することも可能になるかもしれません。

そこで問題になるのが「重力」です。もし、重力が生物の生殖や発生に影響を与えているとすれば、宇宙で世代を重ねて生存することはむずかしくなります。

しかし、地上で長期間の無重力実験は不可能です。そこで、重力が変化したときの生体の影響を探るために、私たちの研究室では、マウスをグルグル回しながら飼育し、過剰の重力を加えながら継代育成しています。地球上の重力(1G)に対して、2G(地球上の2倍の重力)の環境で生活させ、繁殖したマウスの諸機能が世代を追い、どのように変化しているか調べているのです。

 

骨太のマウスが生まれる?!

マウス卵子の体外受精を行ってみると、重力の負荷が2倍になると受精率が低下すると共に、一度に複数の精子が受精してしまう、多精子侵入という異常が頻発することが観察されました。また、成長しても小型化しますが、これは水やエサの摂取量が減少することと、過重力によって脳下垂体からのホルモン分泌に変化が起こっているためではないかと考えられています。

小型化したマウスは、実は体型のわりには太い骨を持っています。これは2倍の重さになった体重を支えるための適応であり、特に重たい頭を支える首の骨は明らかに太く、筋肉もまた太くなっています。継代育成は現在のところ、9世代に至っていますが、さらに実験を繰り返し、完全な2Gマウスが誕生したときには、地上ではマイナス1Gの負荷をかけたことになり、微少重力実験のモデルになるのではないかと期待しています。

(動物バイテク研究室)

 

 

 

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