東京農業大学

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教員コラム

クリックでできる未来型栽培!?

2010年10月15日

生物産業学部産業経営学科 教授 竹下 幸一

机上のパソコンのキーボードをたたくだけで、温室内の作物の水やり、換気ができ、夕方になり室温が下がると、自動的に暖房のスイッチが入り、室内は常に適温に保たれる……。近い未来、こんな光景がどの農場でも見らるかもしれません。このようにIT(情報技術)を導入した新らしい農業形態や、インターネットを利用した商品の宣伝や販売など、農業経営の新たな可能性について、東京農業大学生物産業学部産業経営学科の竹下幸一 教授が語ってくれます。

 

パソコンが農業の活性化に貢献!?

いまや生活に欠かせなくなっているパソコンや携帯電話。みなさんも友達とメール交換をしたり、インターネットを利用して必要な情報を検索したりしますよね。会社や学校でも、もはや必需品で、用途に合わせてさまざまなシステムが開発されています。たとえばあて名印刷の作成ソフト。これは年賀状作成ソフトとしておなじみのもので、相手の郵便番号を打ち込むと住所が○○市○○町まで画面上に示されます。

このあて名印刷ソフトを電話番号検索(電子電話帳)や住宅地図のソフトと連動させるとさらに便利になります。相手の電話番号を入力するだけで、住所を番地まで検索でき、画面の地図上に相手の所在地が現れるのです。このシステムを宅配便などに利用すれば便利になることでしょう。

そして農業の世界でも、商品の販売や配送だけでなく、作物の栽培にもパソコンが利用され始めています。ITが農業経営の活性化や効率化に、大きく役立つ可能性を秘めているのです。

 

温室栽培の管理は1台のパソコンで

野菜・花の温室栽培では室内の温度調節、水の管理が大切です。たとえばランの生育には、室内が一定の温度に保たれ、水やりの頻度は季節により毎日、あるいは1週間ごとに変えるという条件を満足させる必要があります。

このデリケートな温室の管理を従来はすべて人の手で行い、労力・時間がかかっていました。それがITの発展により、1台のパソコンで管理することが可能になりました。

そのしくみは、まず作物の生育条件と、その条件に合うように温室内の環境を制御するプログラムを利用し、条件を設定するデータをパソコンに入力します。そして温室の各所に設置したセンサーで外界の変化をとらえてパソコン に信号を送り、パソコンと計測・制御ユニットを用いて制御するというものです。

水やりでは、日の出後一定の時間が過ぎてから実施、というような条件づけをすることもできます。パソコンで各地の日の出時刻を計算できるからです。このシステムによって、農家の人は水やりのため、早朝に起きて準備するという手間から解放されます。

環境の制御については温度調整だけ、水やりだけという単独の制御システムから、多種多様な環境の制御ができる「複合環境制御システム」という優秀なものまでが開発されています。

 

インターネットが生産者・消費者を結ぶ

また、インターネットを利用した産地直送品の宣伝と販売が、ここ数年で急速に発展してきました。生産者・消費者間で直接アクセスができるため、消費者は買いたい商品の情報をいち早く手に入れ、安価でショッピングができます。また生産者は、消費者の要望を直接知ることができるなど、双方にメリットがあります。両者の対話の必要性は、食品の安全性、価格への関心の高まりとともに重要視されてきましたが、従来の手紙や電話を利用するという方法では時間がかかり、人手も要します。インターネットを利用することが、農産物の流通において手間や労力を減らしつつ、かつマーケットを全国に広げる契機になったのです。

実際の注文方法としては、ホームページで商品を宣伝し、買い物かご方式やメールによる注文受け付けなどが行われています。より多くの人に利用されるためには、入力やデータ処理における使いやすさが課題で、使い勝手がよく、費用のあまりかからない方法の開発が期待されています。

将来的には、いま以上にITが農産物の生産や商品の販売に導入されていきます。作物の消毒や肥料を与えることもパソコンの画面をクリックするだけですむようになるでしょう。さらには、携帯電話などの携帯情報端末を使っての商品の注文ができるようになるでしょう。

さまざまなITを活用し、新たな農業経営の形を創造していくのも農学のおもしろさです。

 

 

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