東京農業大学

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教員コラム

炭酸ガスのプロローグ炭酸ガスも輪廻転生

2010年8月2日

東京農業大学短期大学部 醸造学科 教授
醸造学科食品微生物学研究室
前副学長
中西 載慶
主な共著:
『インターネットが教える日本人の食卓』東京農大出版会、『食品製造』・『微生物基礎』実教出版など

二酸化炭素(CO2)は、無色、無臭、通常は気体で炭酸ガスともいい、大気中に約0.03%含まれています。ガス状のときは、他の物質とほとんど反応しませんが、水に溶けると炭酸となり反応性が大きくなります。また、炭酸ガスは低温で、液体や固体(ドライアイス)にすることができ、利用度の高い物質です。ビール、シャンパン、サイダー、ラムネ、食品保存剤、入浴剤、消化剤など、炭酸ガスと関係の深いものは沢山あります。しかし、最も重要なことは、ご存知のように、植物が、この炭酸ガスと水と太陽エネルギーから、光合成により生物の生命活動に必要不可欠な様々な有機物と酸素をつくり出すからです。最近は、地球温暖化の要因物質として悪者扱いもされていますが、酸素や水などと同様、最も身近で大切な物質であることに変わりはありません。ちなみに、炭酸ガスの化学構造は、1733年にラボアジュ(仏)により明らかにされ、その液化は、デービとファラディー(英:1823年)、固体化は、チロリエ(独:1834年)が成功しました。また、アイスクリームの発明を契機に1925年に米国の「ドライアイス・コーポレーション」社が固体二酸化炭素の工業生産を始め、その商品名の「ドライアイス」が、そのまま現在も使われています。

 太陽系の惑星の中で、地球の両隣にある火星(大気量は地球の1/100)や金星(大気量は地球の100倍)の大気組成のほとんどは炭酸ガスで占められています。したがって、原始地球も高濃度の炭酸ガスに覆われていたと考えられています。その炭酸ガスはどうなったかというと、ほとんどは海水や雨水に溶け、岩石に含まれるカルシウムイオンと反応し炭酸カルシウムとなり、また、サンゴや貝類など多くの生物が、骨格や殻をつくるために炭酸カルシウムをつくりだし、それらが石灰岩(炭酸カルシウム)となり地球上に堆積していったと考えられています。つまり、地球誕生時に大量に存在したであろう炭酸ガスのほとんどは、石灰岩に変わったということのようです。

 炭酸ガスは温室効果ガスの一つで地球温暖化と深く関係し、それらが微量大気中に存在していることで、地球の温度(平均気温約15℃)が保たれているとのこと。もし、なかったならば、地球の温度は−18℃になってしまうとか。適度・適量が重要なのですが、19世紀の産業革命以降、化石燃料の大量消費に伴い、炭酸ガス濃度は急カーブで上昇し200年間で約3割(0.028%から0.036%に)も増加しました。早急な対策が必要です。しかし、地球は誕生以来、温暖期や氷河期などを繰り返していることを考えると、地球の気温は温室効果ガスだけでなく、非常に複雑な要因が関係しているので、将来予測は本当に難しそうです。しかし,次世代の人たちのために、やれるところ、やるべきことは、やっておくことが必要です。備えあれば憂いなし。

 2月、3月には、寒さの中の受験生に心痛み、9月入学賛成と思い、4月になると、身勝手なもので、春爛漫、桜満開、新入生、新社会人、やはり、日本の新年度は4月がいいと心から思ってしまいます。

 次号……「温室効果と京都議定書」につづく

 

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