研究成果「シイタケに含まれる酵素が食塩存在下で効率よくグルタミン酸を生成することを発見 ~シイタケのうま味発現機構に新知見」 | 醸造科学科 前橋 健二 教授、同学科卒業の竹上 佳那さんら
2024年11月19日
教育・学術
醸造科学科4年生(当時)の竹上 佳那さんは卒業論文研究の中でシイタケエキスのグルタミン酸生成酵素活性を調査し、シイタケには食塩存在下でグルタミン酸量を大きく増加させる酵素「食塩活性化グルタミナーゼ」が存在することを発見しました。
グルタミナーゼはアミノ酸の一種グルタミンを、うま味を持つグルタミン酸に変換する酵素で、醤油醸造ではとても重要な酵素です。
シイタケエキスのグルタミナーゼ活性は、10%食塩を加えたときに最も高く、18%食塩下でも無塩のときよりはるかに高い活性を示しました。
シイタケのグルタミナーゼ活性は生シイタケでも干しシイタケでもほとんど変わらないことがわかりました。また、グルタミナーゼ活性はシイタケの傘の部分よりも柄の部分が高いこともわかりました。このことから、廃棄されることの多いシイタケ柄に、有効活用の可能性が期待されます。
さらにシイタケエキスのグルタミン酸生成量を調べたところ、1~2%食塩を加えて50℃で加温したときが最も生成量が多く、ニンニクやタマネギのエキスと混合すると何倍もの量に生成量が高まることがわかりました。尚、シイタケを加温すると核酸系うま味物質5’-グアニル酸も増加することはすでに報告されています。
これらの研究成果から、調理においてシイタケのグルタミナーゼ活性をうまく利用することで、これまで以上に効果的にグルタミン酸量を増加させてうま味を高められる可能性が示唆され、これまで考えられてきた椎茸だしのうま味発現の仕組みに新たな知見が加えられました。
この研究成果はガストロノミー分野で著名な国際科学誌International Journal of Gastronomy and Food Science 38 (2024) 101054(2024年11月5日付)に掲載されました。
論文名:Shiitake mushroom (Lentinula edodes) extract has chloride-activated glutaminase activity that efficiently increases glutamic acid in foods with sodium chloride
著者名:Kana Takegami, Mayumi Maeda, Jun Yoshikawa, Kenji Maehashi
URL: https://doi.org/10.1016/j.ijgfs.2024.101054