共同研究「果実を食べる哺乳類はどこにタネを運んでいる? ~季節によって変わる種子の運び手の役割~」|森林総合科学科 山﨑 晃司教授
2023年2月9日
教育・学術
国立大学法人東京農工大学大学院連合農学研究科の栃木香帆子大学院生(博士課程3年)、同大学院グローバルイノベーション研究院の小池伸介教授、長沼知子特任助教(当時、現 農研機構)、ノルウェーのノード大学のSam Steyaert准教授、東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科の山﨑晃司教授らの国際共同研究チームは、日本に生息し果実を食べることで被食型種子散布(注1;図1)を行う哺乳類5種の間で、その種子散布者としての役割がどのように異なるのかを検証しました。
その結果、種子が発芽や成長に適した環境に散布されるか否かは、運び手となる哺乳類の種や季節によって異なることがわかりました。また、一度に散布される種子の数は哺乳類の種によって異なるものの、共通して秋に多くなる傾向が見られました。さらに、種子が散布される場所の特徴も、哺乳類の種によって異なる傾向がありました。たとえば、夏にはツキノワグマは高木が多い環境に、ニホンザルは明るく開けた環境に、多く種子を散布する傾向がありました。これらのことから、哺乳類5種は同じ樹種の果実を食べたとしても、それぞれが異なる環境の場所に種子を散布するので、種子散布者として異なる役割を果たしていることが分かりました。また、果実の種子の運び手として異なる役割をもつ複数の哺乳類種が同じ場所に生息することは、植物にとっては様々な環境条件の場所に種子を散布される機会が確保されることにもつながります。
図1:哺乳類によって被食種子散布が行われる模式図
研究のポイント
- 果実を食べる哺乳類が運ぶ種子の量や、種子が運ばれる場所の環境は、哺乳類の種によって異なっていました。
- 同じ哺乳類種でも、季節によって種子を運ぶ場所の環境は異なりました。
- 果実を食べる複数の哺乳類種が共存することで、植物の種子は様々な環境の場所に散布されることがわかりました。
本研究成果は、自然科学系のオープンアクセス誌「Global Ecology and Conservation」オンライン版(2022年11月17日付)に掲載されました。
論文名:Differentiation and seasonality in suitable microsites of seed dispersal by an assemblage of omnivorous mammals
著者名:Kahoko Tochigi, Sam M.J.G. Steyaert, Tomoko Naganuma, Koji Yamazaki, Shinsuke Koike