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ニュースリリース

研究成果「福岡と対馬のニホンカワウソ分子系統進化」|国際農業開発学科 和久 大介 助教

2022年8月25日

教育・学術

 これまで調べられてこなかった九州のカワウソの遺伝子を調べ、福岡に生息していたカワウソは四国に生息していたカワウソと近縁だった一方で、対馬で2017年に発見されたカワウソは大陸に生息するユーラシアカワウソと同系統だったことを発表しました。

 本研究では、福岡市博物館に保管されていた福岡藩士・前田家の資料で福岡城三ノ丸御殿の御庭にて採取された「カワウソ ヒケ」なる動物の口ひげと、2017年に琉球大学の研究グループが対馬で撮影したカワウソにより排泄されたと思われる糞を解析しました。これらのサンプルからミトコンドリアDNA全長配列を決定し、アジアに生息するユーラシアカワウソ、そして既に発表されているニホンカワウソと共に分子系統解析を行いました。その結果、対馬市で発見されたカワウソは韓国やサハリンと単系統群を形成し、ユーラシアカワウソと断定されました。その一方で、福岡のカワウソは高知県のニホンカワウソと単系統群を形成したことから、日本列島独自系統である可能性が高い結果となりました。

 試料を提供していただいた福岡市博物館と環境省の皆様に感謝申し上げます。

研究詳細

「福岡と対馬のニホンカワウソ分子系統進化」

研究者

和久 大介(東京農業大学 国際食料情報学部 国際農業開発学科 助教)
佐々木 浩(筑紫女学園大学 現代社会学部 現代社会学科 教授)

概要

 ニホンカワウソはもともと離島を除く日本全国に分布していたが1979年に高知県で最終目撃情報があり、2013年に環境省が絶滅を宣言している。その一方で2017年に長崎県対馬市で、センサーカメラでカワウソが撮影された。当時の調査の結果、対馬で撮影されたカワウソが排泄したと思われる糞が採取された。さらに2019年には福岡市博物館に保管されていた福岡藩士・前田家の資料に、福岡城三ノ丸御殿の御庭で採取された「カワウソ ヒケ」なる動物の口ひげがあることが判明した。我々は対馬市のカワウソ糞と、前田家資料の口ひげを解析し、ミトコンドリアDNA全長配列を決定した。これらをアジアに生息するユーラシアカワウソと共に分子系統解析を行った。その結果、対馬市のカワウソは韓国やサハリンと単系統群を形成し、福岡のカワウソは高知県のニホンカワウソと単系統群を形成した。このことから、対馬で発見されたカワウソはユーラシアカワウソと断言でき、福岡に生息していたカワウソは日本列島独自系統である可能性が高い結果となった。

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