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ニュースリリース

国際連携で挑むタマネギゲノム解読|農学科 峯 洋子教授・生物資源ゲノム解析センター 田中 啓介助教

2021年8月30日

教育・学術

 山口大学大学院創成科学研究科(農学系学域)の執行正義教授のグループは、東北大学大学院生命科学研究科の佐藤修正教授、かずさDNA研究所ゲノム情報解析施設の平川英樹施設長、農研機構の藤戸聡史研究員(野菜花き研究部門)、塚崎光グループ長(東北農業研究センター)、東京農業大学の峯洋子教授、田中啓介助教等との共同研究により、シャロットとタマネギの倍加半数体間のF2分離集団等を用いて次世代シーケンサによる発現遺伝子の網羅的解析を実施しました。その結果、約4,400個の発現遺伝子を8本の染色体に対応した遺伝地図上に整列化させることに成功しました。

発表のポイント

  • 農業分野では、栽培品種の育種目標が多様化する中で、ゲノム配列情報に基づく育種技術の開発が求められている。
  • ヒトのゲノムは約30億の塩基対からなっているが、タマネギは、なんとヒトの5倍以上もの約160億塩基対からなっている。祖先種や近縁種を含むタマネギを人類が栽培してきた歴史は数千年以上と非常に長く、現在まで世界中の様々な地域の伝統的な知識や知恵と相まって栄養豊富な健康食材として利用され続けている。しかし、ゲノムサイズの巨大さゆえ、分子生物学手法に基づく大規模な研究はなされておらず、タマネギのもつ魅力的な形質とゲノム情報との関連が未だ不十分である。
  • ゲノムのシークエンス解析では、大量のゲノム配列を細切れにし、お手本となる基準ゲノムと照らし合わせて解読する場合が多い。一方、基準ゲノムのないタマネギを基準ゲノムを必要としない解析手法であるde novo Genome Assembly(参照配列を必要としない配列貼り合わせ)で解読しても、ゲノムの巨大さと複雑さゆえ塩基配列情報の並び順を決定することは難しい。そこで、山口大学、東北大学等からなる国内研究グループは発現遺伝子に関する配列情報を集めることに注力し、異種染色体添加系統を用いて約25,000種類の発現遺伝子の座乗染色体を決定し、さらに倍加半数体系統の特性を活用し、それらの並び方を正確に反映した高密度遺伝子地図情報を整備することに世界で初めて成功した。さらに、この遺伝地図情報がお手本として一役買い、2021年に日本(山口大学を代表とするグループ)とオランダの共同研究グループがタマネギの全ゲノム解読に世界で初めて成功した。
  • 本研究により、タマネギの全ゲノム配列が高精度に明らかになったことで、高等植物におけるゲノム巨大化のメカニズム解明を進めやすくなる。また、整備された配列解析情報に基づく育種技術の開発が期待される。

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