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ニュースリリース

第10回「食・農・環境」教育フォーラム」 【実施報告】

2016年2月1日

教育・学術



 先月(1月)政府は、現在検討中の都市農業振興基本計画の素案を明らかにしました。それによると、これまで原則は宅地化すべきとされていた都市農地について、都市機能の中で「あるべきもの」という趣旨を盛り込むなど、都市農業の存在価値が広く見直される状況にあります。このように都市農業の必要性が注目される中で、この時宜にかなった話題を、本学でも先般(12月17日)、第10回「食・農・環境」教育フォーラムの討議内容に取り上げて、意見交換を深めました。


〔530名が参集し都市農業の価値や発展の論理を検証〕
 第10回「食・農・環境」教育フォーラムは、「都市農業、その多面的価値と発展への論理?都市農業振興基本法の制定を受けて?」の全体討議テーマのもと、2015年12月17日(木)に、東京農業大学百周年記念講堂で開催しました。本フォーラムは、東京農業大学「食農環境」教育研究プロジェクト、食料・農業・農村経済学会、食料環境経済学科、国際バイオビジネス学科の4者の共催によって行い、本学の学生・教員や一般来場者を合わせて、約530名が参集しました。
 都市農業は、著しく都市化の進展した地域で行われている農業ですが、特に、三大都市圏における市街化区域内の農地を舞台に展開される農業を指すことが一般的です。
 本学のある世田谷区内においても、現在約100ヘクタールの農地があり、農家の庭先販売を中心に120を超える農産物直売所が存在し、区内で生産された新鮮な農産物が、日々多くの地元区民等に供給されています。冬の時期は、伝統野菜の一つである大蔵大根などが特に人気を集めています。こうしたキャンパスの立地も意識しつつ、本フォーラムでは、世田谷区内にも力強く残る「都市農業」に関する論点を考える機会としました。
 そこで、本フォーラムでは、都市農業の多面的価値を、現場の先駆的な実践者二人の話を踏まえて考察し、さらに、行政の立場で長年にわたり都市農業政策を推進されてきた指導者の話も聞き、これからの都市農業の存続・発展の論理を検証することをねらいとしました。


〔実践や経験を踏まえた議論を展開〕
 本フォーラムでは、食料環境経済学科の五條満義が、討議テーマの趣旨説明を行った後、三名のパネリストが順番に登壇しました。
 パネリストは第1番目に、白石好孝氏(東京都練馬区)が「食農教育の実践と展望?白石農園の取り組みから」と題して報告しました。白石氏は、都市農業の特徴を活かした象徴的な取り組みである、利用者が農園主から農作業を学びながら生産活動を行う「農業体験農園」の方式を、実質的に築き上げた都市農業のリーダーです。報告では、ご自身の農園を拠点とした長年の食農教育の実践を踏まえて、その持つ意義を明快に論じてくれました。
 第2に、門倉麻紀子氏(神奈川県横浜市)は、「女性が継続してできる都市型体験農業をめざして」と題して報告を行い、家の畑を活かしてご自身のお子さんを教育したいという発想から出発し、今では、多品目の野菜・果樹や農産加工、幅広い年齢層を対象とした体験イベントを手掛けてきた、その経過と成果を取り上げました。その中で、来園者の目線に立ったきめ細かな取り組みを進めてきた思いを、随所に盛り込んでくれました。
 第3に、東京都庁の安全安心・地産地消担当部長である武田直克氏は、「東京都の都市農業政策」と題して報告を行いました。武田氏は、都市農業関連施策を推進する正に要の立場におられ、本学・東京農業大学卒業後に都庁に入られて、約40年間にわたり農業行政に携われて来られました。その豊富な経験も踏まえつつ、都市計画に関する政策展開と都市農地の関係性や、都市農業振興基本法を受けた今後の政策上の検討課題等を体系的に解説してくれました。
 総合討論では、北田紀久雄教授(食料環境経済学科)並びに稲泉博己教授(国際バイオビジネス学科)の進行で行われ、フロアから質問票により、十数件の論点が寄せられました。その中で、都市農地に関する課税の実態、農業の担い手育成に果たす体験農園の機能など、多様な内容をめぐり、パネリスト三名が懇切に応答してくれました。
 以上、本フォーラムの報告と致します。本フォーラムをめぐり、ご支援・ご指導をいただいた関係各位に、心より厚くお礼申し上げます。


文責・五條満義(食料環境経済学科)

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