12月14日(土)13:00? 第9回新規就農フォーラム『農業心耕』?地域主義でTPPに克つ? 開催
2013年11月26日
教育・学術
場所:東京農業大学厚木キャンパス1306教室
日時:平成25年12月14日(土)13:00?18:00
(受付:12:30 講義棟西側入り口エレベーター前)
◎基調講演(13:00?15:00)
講演1.「地域コミュニティーのためのワイナリー」
武田 晃(たかやしろファーム&ワイナリー代表取締役)
講演2.「福祉を取り入れた農業への夢」
長田 きみえ(おさだ農園)
講演3.「地域をつなぐ農カフェ『OMOしろい』」
宇賀 俊之(にっぽん食堂代表)
◎討論会(15:15?16:30)
「地域主義と交流による持続的農業」
コーディネーター:宮田 正信(東京農業大学総研研究会就農者推進教育研究部会長)
◎情報交換会(16:45?18:00)
場所:レストラン「けやき」(無料)
主催:東京農業大学総研研究会就農者推進教育研究部会
東京農業大学就農者育成支援検討委員会
共催:東京農業大学農学研究所
後援:東京農業大学教育後援会
連絡先
〒243?0034 神奈川県厚木市船子1737
東京農業大学農学部 キャリア・エクステンション課
?:046?270?6228
E-mail :
『絶対的価値を求めて』?地域で農業を継続することの意味?
資本主義、自由貿易の立場ではTPPへの加盟は必然だろう。グローバルな視野(国際的な意味でのグローバルと経済の諸要因としてのグローバルの両面)から見れば、そして強者の論理で言えばTPPだろう。自由主義、民主主義はいいとしても、世界のすべての人が同じものを食べ、同じ価値観を持つことなど、考えただけでも身の毛がよだつ。様々な環境下において生まれた文化、宗教、生活様式を否定することはできない。多様性を認め合うことこそ重要だ。
経済成長の結果、私たちは何を得て何を失ったのか、再検証をしなければ豊かな世界のロードマップを描くことはできない。わが国で言えば、経済的な豊かさと平和を手にした。何よりも尊いことだ。しかし一方で、環境と人と人との関わりを軽視してきたことは看過できない。成長の過程で豊かな自然や環境は失われ、いくばくかのリハビリやブレーキは試みられているが豊かさを取り戻すには至っていない。人と人の関わりについてはややもすると商業主義的な「お・も・て・な・し」など、見せかけの関わりに置き換えられ、人間関係での豊かさは実感できない。信頼と尊敬の中にあるべき人間関係は疑心暗鬼が跋扈する世界に成り果てている。今グローバル化を推し進めようとすれば、環境や人と人との関わりのみならず、社会の諸象において不都合が生じると言っても過言ではなかろう。
さて、私たち農学を学ぶ者はこれらのことをどのように捉え、どのように行動すればいいのだろうか。まず、農業、農村の多面的な機能について意識を注いでいただきたい。このことについては様々な場面で紹介されることが多いが、そのことを行動として展開している事例は多くない。農業、農村には安心安全で安定的な食料を生産する機能だけでなく、国土や環境を保全、美しい農村景観の創出、食育や環境教育、情操教育への貢献、農業や農民に関わることによる福祉的効果、豊かな社会や文化の継承など、地域で農業を実践し続けなければ得ることができない多様な機能があり、農業、農村が豊かな社会の実現に不可欠であることが理解される。
1961年の農業基本法制定以来、農業の近代化が進められたが、農業、農村の空洞化は顕著になり、担い手の高齢化、農村の過疎化は復元不可能で、もはや社会的機能すら果たせない状況にある。一方で利便性の追求と安易な価格競争は、食糧自給率40%を割る事態になっている。もう一度言うが、私たちは農業、農村の多面的機能について体験的に理解するとともに、持続的で豊かな社会の構築に関わらなければならない。そのことが自らの幸福の実現に繋がる。
新規就農推進フォーラムは9回目を迎え、それと共に各地で体験的な実習を重ねてきた。そしてひたすら地域主義に徹している美しい現場に赴き、美しい人と交流してきた。社会がいかに変容しようとも、この美しさには絶対的価値がある。このことを求め続けたい。
(東京農業大学総研研究会就農者推進教育研究部会長 宮田 正信)