東京農業大学

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教員コラム

自然の恵みを追求した“自然養鶏”

2017年1月1日

生物産業学部地域産業経営学科 助教 小川 繁幸

オホーツクの地域資源 Foods Who(12)

新規就農へのチャレンジ

 北海道オホーツク地域の農業といえば、広大な大地で加工原料となる畑作三品(麦、ジャガイモ、ビート)の生産が中心だが、網走市平和には小規模ながら“自然と生き物と共にある暮らし”にこだわった養鶏家がいる。
 杉村農園の杉村繁治氏、金恵氏のご夫婦は、もともと中学校の教員をされていたものの、“自然と生き物と共にある暮らし”を目指し、平成22年に新規就農した。飼料は自然の恵みであるオホーツク産小麦や道産の米、トウモロコシなどを与え、金網張りの開放鶏舎の土間で平飼いすることで十分な運動をさせ、薬剤不要の健康な母鶏から生まれた卵を生産する。オホーツクの厳しい冬も、鶏舎にはビニールシートで囲うだけで無暖房。また、鶏にはストレスがあまりかからないように、飼育密度は1坪10羽以内で雌雄一緒。このように、“できるかぎり、自然な環境で。できるかぎり、そのままで”をコンセプトに自然養鶏によって生産された杉村夫妻の赤玉有精卵「あばしりピースたまご」は、食通もうならせる絶品卵だ。
 北海道においては新規就農が厳しいと言われている中で、杉村夫妻は地域集落・地元農家のネットワークを大切にしながら、オホーツク産の飼料の確保と安定生産に尽力してきた。また、宅配を中心に地道にマーケット開拓し、新規就農を成功させた。


命の一滴まで大切にする商品開発

 愛情をかけて育てた鶏の命を最後の一滴まで大切したいとの思いから取り組んでいるのが、規格外卵や卵を産み終えた親鶏という未利用資源を活用した商品開発だ。杉村夫妻は共に「オホーツクものづくり・ビジネス地域創成塾」に入塾し、商品開発と販路拡大にチャレンジし、卵の風味を最大限にいかしたノンオイルシフォンケーキや卵を産み終えた親鶏の肉を活用したスモークチキン、卵かけご飯用の鶏醤「命の一滴」を開発している。これらの商品は宅配卵のユーザーを中心に販売されるとともに、地域イベント等においても積極的に販売・普及活動に努めている。
 また、杉村夫妻は、就農にあたって地域集落・地元農家のネットワークに支えられているという地元関係者への感謝の気持ちを伝えるために、飼料等を提供してくれた農家の生産物を紹介する宅配卵利用者向けのニュースレター“お節介便”や関係者との連携による地域産品の販売イベント“お節介マルシェ”を実施するなど、地域おこしの活動にまでおよぶ。
 “よそもの”だからこそ気づく地域の魅力、地元関係者の温かさとネットワークの強みを最大限にいかして6次産業化を体現されているのが杉村農園だといえよう。今ではオホーツク地域でこだわりの商品開発をする上では欠かすことのできない杉村農園の“あばしりピースたまご”は、卵のピクルスや生パスタなど地域の有志とのコラボ商品によってそのレパートリーは多様だ。
 地域活性化においてはよく“よそもの”の目、熱意を持った“ばかもの”、行動力がある“わかもの”が必要と言われるが、徹底して自然養鶏にこだわるという“ばかもの”としての熱意と、地域の魅力を最大限にいかすために“よそもの”の目をいかして、これからもオホーツク地域の6次産業化をリードする農家・起業家として更なる飛躍を期待したい。

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