東京農業大学

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教員コラム

北海道ゆかりのトガリネズミを、寒冷地産のモデル生物にするために。

2016年2月18日

生物産業学部 生物生産学科 動物バイテク研究室 亀山 祐一 教授

マウスやモルモットが実験動物に用いられるのは、飼育が簡単で、繁殖性が高く、その生理・生態が研究されているからです。しかしいずれもげっ歯目。比較生物学の観点から見ると、偏りがあります。そこで私は北海道に生息するオオアシトガリネズミに着目し、学生と一緒にフィールドに出て捕まえ、飼育して、その生態を調べています。

まずはその生態の解明から

トガリネズミ形目トガリネズミ科のオオアシトガリネズミ。ネズミという名前がついていますが、モグラに近い半地下性で、体長は5㎝~10㎝、体重は10g前後。ふだんは昆虫類やミミズを食べています。森林における土壌生態系のピラミッドで、頂点に立つ動物のひとつです。木を枯らすなど、人間にとって問題を起こさないため、これまで、あまり詳しい研究はされてきませんでした。
トガリネズミ類は大食漢です。大学で飼育している個体には、毎日、体重の半量を超える餌を与えています。それなのにオオアシトガリネズミは冬眠することはありません。大地も凍る冬の時季、何を食べ、どのように過ごしているのでしょうか?そんな基本的なことさえ、まだ分かっていないのです。
得られた生態などにまつわる研究成果は、やはり北海道の野生種で、絶滅危惧種に指定されている最小の哺乳類・チビトガリネズミの保護に、有益な情報となるに違いありません。

1年を通した繁殖も期待できる

東南アジアや日本だと九州の一部と南西諸島にいるジャコウネズミもトガリネズミ形目で、すでに実験動物のスンクスとしても使われています。しかしスンクスは低温にかなり弱く、寒冷地産のオオアシトガリネズミに期待したいところです。
オオアシトガリネズミの繁殖期は主に春といわれてきましたが、野生で捕まえた個体を調べてみると、繁殖期でないとされてきた時期でも、精子や卵子が形成されていることが分かりました。十分な餌があり、温度や照明を調節した飼育下であれば、年間を通した繁殖も夢ではないと考えています。

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オオアシトガリネズミの飼育個体。 尖った口吻と小さい目がカワイイ!

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