東京農業大学

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教員コラム

卵母細胞の解明が、将来の医学に貢献する!

2009年7月17日

短期大学部生物生産技術学科 教授 加田 日出美

「卵母細胞」になるまでのきびしい道のり

私たちほ乳類は、卵子と精子の受精により誕生しますが、不思議なことに、卵子も精子も最初は同じ細胞からスタートします。その細胞のことを「始原生殖細胞」といいます。マウスによる実験では、受精後7日目ごろに始原生殖細胞が現れ、12.5日目頃になって初めて雌雄(メスとオス)の区別がつくようになります。その後、メスの始原生殖細胞は16時間ごとに分裂・増殖しますが、そのうちの約40%が死んでしまいます。

始原生殖細胞は、その後も増殖と死滅をくり返し、最終的には生き残った30〜50%の細胞が、卵子のもととなる「卵母細胞」になり、成熟して排卵に至ります。 しかし、なぜ、このような増殖と死滅をくり返し、選ばれた細胞だけが卵母細胞になるのか、はっきりとしたメカニズムはまだ解明されていません。

 

生命の謎を解き、人の命を救おう!

私たちは、このような死滅と選択のメカニズムや卵母細胞の成長、形成について解明するために、始原生殖細胞から成熟卵母細胞までの過程を体外で培養し、観察することにチャレンジしています。この生命現象のしくみが解明されれば、卵母細胞の死滅を防止でき、卵母細胞の大量生産が可能になるかもしれません。そうなれば、若年性のガンなどで卵巣を摘出した患者さんでも、その卵巣を保存しておけば、将来、卵母細胞を成熟させて子どもを持つことも可能になるのです。

動物生産分野では、クローン技術が注目されがちですが、クローン技術も結局は、卵細胞質に体細胞のゲノムを移植することなしには個体を得ることはできません。私たちの研究は、唯一無二の卵細胞質を体外で作り出す意義のある試みなのです。

(短期大学部 生物生産技術学科 畜産学研究室)

 

 

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