東京農業大学

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教員コラム

みんなが遊んだ公園の秘密

2010年10月15日

地域環境科学部造園科学科 教授 金子 忠一

公園。世界のどの町にも公園はあります。でも、それをデザインする人たちがどんな思いを込めているのか、その実態はあまり知られていません。そこで、そこで、東京農業大学地域環境科学部造園科学科の金子忠一 教授が、公園づくりの知られざる秘密を解き明かしてくれます。

 

公園にはおぼろげで、それでいてくっきりとしたこころの原風景があります。父親と初めてしたキャッチボール、友達とケンカをして泣いた夕暮れ、週末、兄妹と一緒に遊んだすべり台、町内盆踊り大会で盛り上がった真夏の夜……。

公園は読んで字のごとく「おおやけの園」。つまり、みんなが楽しみ憩う場です。しかし、その役割は遊びやスポーツなどのレクリエーションだけではありません。環境の保全、街の景観づくり、そして災害の防止や避難場所といった役割ももっています。

景色を眺めて楽しんだり、散歩をしたり。あるいは鬼ごっこやボール遊びなど、公園はだれもが気軽に行けて、楽しいところでなければなりません。そして、街づくりをするうえでも大きな役割をもっています。そんな公園には、さまざまなくふうが施されています。

 

鳥や虫の動きも考えて

たとえば植物。公園には、いろいろな草花や樹木がありますが、植物を植える時には、美しさだけでなく、鳥や昆虫たちのことも考えてデザインします。 
花を渡り歩く昆虫にチョウがいますが、チョウにも渡り鳥と同じように、飛んでいく時には「道」があるようです。そこで「こっちがいいかな」「あっちがいいかな」と、植物の種類や植える位置を考えたりします。

公園はもちろん人間が中心です。でも、昆虫たちにとってもすみやすい、見かけだけでなく生態系も視野に入れた環境づくりをおこなえば、人間とチョウが一緒にたわむれることができる。そのほうがずっと楽しいと思います。

 

人の動きも考えてあげないと

公園は楽しくなければなりません。それと同時に使いやすくもなければなりません。突然ですが、あなたは道を歩く時に真っすぐ歩いていると思いますか?答えは「NO」です。

一度、砂浜を歩いて足跡を振り返ってみてください。おもしろいです。だれひとりとして真っすぐ歩いていないと思います。想像してみてください。細い真っすぐな一本道を歩くとしたら。なんだか窮屈でストレスがたまってしまいませんか?実はふしぎなことに、人は蛇行しながら歩いているのです。自然の川が蛇行して流れているように、人も自然に右へ左へと蛇行して歩いているんです。

公園の園路も細く真っすぐにはつくらずに、幅を広くしたり、ゆったりと蛇行するようにつくってあります。こうした人間の特性にも配慮して公園はデザインされています。

 

季節のことも考えて

公園を使いやすくつくったとします。でも、公園はなにも暖かい地域だけにあるものではありません。 寒い地域にも公園はあります。もし雪が降る地域なら冬はまったく使えなくなるかもしれません。せっかく使いやすくつくっても一年の 半分近くは雪に埋もれているなんてもったいない話です。

こんな時は、雪に覆われた公園をイメージします。雪の中でも子どもたちが遊べることってなんだろうか……と。

たとえばスキー山。公園の一部を山にしておけば夏場はダンボールをお尻に敷いて滑り、雪が積もればスキー山に変身することができます。池はスケートリンクにすることも考えられます。

こうすれば、雪に覆われていても、楽しく遊べる空間ができあがります。

 

災害の時には

阪神淡路大震災の時、被災された人たちの中にはブランコにシートをかぶせて立派なテント小屋をつくった人もいました。樹木の間にはヒモを張って即席物干し場に。遊具や樹木も、遊ぶだけでなくこんなものに大変身するのです。

「どんな公園にしようか?」「ほら穴をつくって秘密基地にしてみようか」「果実のなる木を植えて食べられるようにしたらおもしろいんじゃないか?」
人間と自然が共に生き生きする空間をデザインするのも農学のおもしろさです。

 

 

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