東京農業大学

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教員コラム

地場産じゃがいもを使ったスイーツ開発と地域おこし

2016年10月1日

生物産業学部地域産業経営学科 准教授 菅原 優

オホーツクの地域資源 Foods Who(9)

北海道のじゃがいも生産と多岐にわたる用途

 全国におけるじゃがいも(ばれいしょ)の生産量は約250万トン。このうち北海道で生産されるじゃがいもが約75%を占めている。北海道でじゃがいも栽培が本格的に開始されたのは、明治期の北海道開拓使による作付け奨励であり、冷涼な気候でも比較的安定的な収穫量を確保できたことから、北海道内各地に栽培が広がっていった。北海道東部の畑作農業地帯では、麦類・てん菜と共にじゃがいもは輪作を構成するうえで重要な品目になっている。
 じゃがいもの用途は、主に澱粉原料用のほか、加工用(ポテトチップス、コロッケ、サラダ)、生食用に分かれる。北海道では開拓期当初から商品作物として澱粉原料用のじゃがいも生産が奨励され、現在でも澱粉原料用の生産シェアは5割を超えている。このばれいしょ澱粉は片栗粉として販売されているほか、菓子用、麺類、水産練り製品、インスタント食品、冷凍食品、糖化用(異性化糖、水あめ、ぶどう糖)などの食品類、医薬品や製紙・段ボールなど、多岐にわたって使用されている。
 北海道のじゃがいも生産は、歴史的にも商品生産を目的としたものであったが、農家では澱粉の余剰分を用いた「でんぷん団子」が家庭料理・郷土料理として定着している。


郷土食・でんぷん団子の普及

 網走市に隣接する小清水町は、畑作農業が基幹産業であり、2014(平成26)年のじゃがいもの作付面積は2,210ha、出荷量は98,000㌧となっており、オホーツク地域でも有数の地場産食材を使った特産品開発を手掛けるなかで、2011年から「じゃがいもスイートポテト」を販売した。開発を手掛けたのは町役場職員で農大の「オホーツクものづくり・ビジネス地域創成塾」第1期修了生でもある秋田憲人さんである。2009年から開発を手掛け、使用するパイ生地に「キタアカリ」と「メークイン」を使用するなどじゃがいもの品種を吟味し、生地に地元の鶏卵やオホーツク産のてん菜糖を使用するなど、地場産素材にこだわっている。2015年からはカスタードクリームの代わりに地元でルバーブを生産する農家グループが作ったルバーブジャムを使ったものや甘みが強い品種の「インカのめざめ」を使った新バージョンが登場している。販売期間は6月から11月までの土・日の限定販売で、手作りで生産するため1日240個の数量限定となっているが、発売以来、女性客を中心に根強い人気を誇っており、小清水町の定番商品になっている。
 秋田さんは、地域の若手メンバーと「これぞ小清水!実行委員会」を組織し、郷土食の「でんぷん団子」の普及を進めるイベントや独自のゆるキャラづくりに関わるなど、地域を活性化する活動に熱心に取り組んでいる。2011年には縦2.55m×横1.25m、重さ115kgの巨大な「でんぷん団子」を作ってギネス認定を受けた。この巨大な「でんぷん団子」のギネス認定のニュースは、思わぬ展開を呼び起こした。九州・福岡県で明太子・煎餅菓子を製造・販売する㈱山口油屋福太郎が、小清水町のじゃがいも澱粉を主原料にした煎餅菓子「ほがじゃ」を製造する工場を進出させたのである。工場では約30人の地元雇用を創出するなどの効果を生み出している。
 じゃがいもは、北海道のさまざまな地域で生産されているが、小清水町では地域の若手メンバーが中心になり、地域の重要品目であるじゃがいもや郷土食の「でんぷん団子」にプライドを持ちながら活動している。次世代に続く地域おこし活動として注目したい。

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