東京農業大学

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教員コラム

卵はタンパク質の王様タンパク質はアミノ酸

2010年8月2日

東京農業大学短期大学部 醸造学科 教授
醸造学科食品微生物学研究室
前副学長
中西 載慶
主な共著:
『インターネットが教える日本人の食卓』東京農大出版会、『食品製造』・『微生物基礎』実教出版など

我々の肉体と生命活動のすべてを支えるタンパク質が今回からのテーマです。タンパク質は、漢字で蛋白質と書きます。蛋とは卵、蛋白とは卵の白身を意味し、事実卵白は、ほとんどタンパク質です。ところで、ドロドロの白身や黄身が、どうしてあの硬い殻の中に綺麗に詰まっているのか? 固い殻はいつどのようにできるのか? ちょっと興味深くありませんか? ついでに、この話から。鶏は、孵化して約4ケ月で卵を生み始めます。鶏の卵巣には、小さな黄色い卵(卵黄のもと)が驚くほど沢山詰まっています。この卵が成熟し卵黄(黄身)となり、1日に1個、輸卵管に排卵されると、数時間で黄身の周りに卵白(白身)が分泌されます。次に、卵殻膜(卵の内側にある薄い膜)が形成され、白身と黄身が包み込まれます。その後、この膜の周りに殻の成分である炭酸カルシウムが徐々に沈着していき、18〜22時間で継ぎ目のない白い硬い殻が完成し、産卵に至るとのこと。鶏は1年で300個近い卵を産みます。卵は、栄養学的に理想的なタンパク質食材です。鶏はすごい。  タンパク質がアミノ酸で構成されていることは今では常識です。しかし、その説は、今から100年ほど前に有機化学者フィッシャー(独)により提唱され、その実証1)は、1955年に生化学者サンガー(英)によって成し遂げられました。この成果から僅か50年余り、タンパク質の研究は、今や、生命の本質にまで迫ろうとしています。タンパク質は、アミノ酸が、通常50個程度から数万個2)、鎖のようにつながり、折れ曲がったりして、複雑な立体構造をもつ物質です。タンパク質を構成するアミノ酸(本誌・12〜14参照)は20種あり、アミノ酸の種類やつながる順序、鎖の長さなどが異なれば、それぞれ異なった働きをする別のタンパク質となります。アミノ酸の種類と数と順序の組み合わせは無限に近い数となりますから、タンパク質の種類も膨大な数となるのです。ちなみに、人体のタンパク質は約10万種あるといわれています。皮膚、髪の毛、爪などはタンパク質そのものですが、その他、臓器も器官も体のほとんどがタンパク質をもとに作られています。また、匂いを嗅いだり、味わったり、消化したり、細菌やウイルスから身を守ったり、見たり、考えたり、記憶したりすることにもタンパク質が関わっています。まさに、タンパク質は生命そのものといっても過言ではなのです。

 ところで、どうして20種類ものアミノ酸が順序良くつながるのか? その説明を少し。アミノ酸は、どのアミノ酸も、カルボキシル基(C)とアミノ基(A)と呼ぶ2本の腕を持っています。各アミノ酸を仮に(○、●、◎)とすると、C─○─A、C─●─A、C─◎─と図示できます。CとC、AとAは手をつなぐことはできませんが、CとA(AとC)はすぐに手をつなぎます。従って、C─○─AC─●─AC─◎─A…とつながります。勿論、C─○─AとC─○─Aの場合でも、C─○─AC─○─Aとなります。つまり、20種のアミノ酸は、同じアミノ酸でも別のアミノ酸でも、幾つでもつながっていくのです。アミノ酸のつながり方が違うとどうして別の働きをするのか? アミノ酸の種類とつながる順序は、どのように決められているか? それも不思議ですが、それらの話は次号以降ということに。  食欲の秋、焼鳥、水炊き、卵料理、美味しい料理が満載ですが、鶏の命を頂いていることも忘れずにいたいものです。次号、「消化酵素もタンパク質」につづく。

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