東京農業大学

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学生が挑む!研究紹介

伝統的酒造りの謎に遺伝子から迫る研究

2016年6月29日

平成28年3月卒 酒類生産科学研究室 大学院農学研究科醸造学専攻進学 楠拓也

発酵食品を作る「人に役立つ微生物」への興味が志望理由

 高校の頃に発酵食品が伝統的な方法で微生物により作り出されることが面白いと感じ、人に役立つ微生物について興味を持つようになりました。調べてみると、微生物を利用した産業の基礎はお酒や味噌、醤油などを作る技術であり、その研究は日本が最も進んでいると知りました。そこで微生物について発酵食品を軸に深く勉強がしたいと思い、この分野の研究が盛んな東京農業大学の醸造科学科を志望し、センター試験利用入試で合格することができました。

微生物による発酵を科学的に考えるための実験と講義

 入学前から醸造科学科のカリキュラムは特に実験が充実していると聞いていました。実際に入学後するとすぐ微生物の実験があり、実際の醸造現場で使用されている酵母など、様々な微生物を培養して観察し、醸造科学科に入学したことを改めて実感したことを覚えています。また、1,2年次では基礎固めとして、実験と並行して講義で化学をしっかりと勉強します。大学の講義は難しいだろうと心配していたのですが、基礎的なことから確認しながら授業が進むため、高校までは理解があいまいだった項目もしっかりと理解しながら、より高度な内容の学習ができました。また、発酵食品やお酒に関連した醸造科学科ならではの講義では、酵素や微生物のレベルから現場的な製造についてまで、科学的な知識を幅広く深く学ぶことができました。さらに、3年次の実験では、勉強した知識を総動員して、実際に味噌や醤油、清酒、焼酎などを自分の手で造りました。毎日の観察から微生物の息づかいを感じることができ、分析データから徐々に発酵物が出来上がっていく化学的な変化を知ることができました。また、実験の途中には、発酵がうまく進まないなど、思い通りにならないこともありましたが、その原因を友達と考えることは楽しく、また考える過程で、自然に1、2年次で学習した化学や微生物学の復習することができ、発酵を科学的に考える力が養われた気がします。

伝統的酒造りの謎に遺伝子から迫る研究に没頭

 醸造科学科では3年次に配属研究室を選びます。最近は発酵などの現象について、微生物の遺伝子の機能からも研究しているということを授業で知り、お酒造りについて微生物の遺伝子の観点からも研究を行っている酒類生産科学研究室を選びました。私の研究テーマは伝統的なお酒造りの方法である「生もと造り」の謎を遺伝子レベルで明らかにする、というものでした。生もと造りでは、お酒の酒母中に亜硝酸が生成しその後減少します。亜硝酸の作用で安全にお酒が造られるのですが、亜硝酸が消失するメカニズムは分かっていませんでした。研究室の先輩の実験により微生物の酵素が亜硝酸を分解すると予想されていたのですが、その酵素が分らないために証明ができておりませんでした。私は先生と相談し、乳酸菌のゲノムDNAを細かく切り分けて大腸菌に導入することで、亜硝酸分解に係わる酵素の遺伝子を探る実験を考えました。実験は、作業の細かい修正をしながら何度と繰り返しで、夜遅くなることもありました。しかし、世界の誰も知らないお酒造り謎を解き明かせるのではという期待から、結果を見るときはいつもドキドキしました。これまで何百年も行われてきた伝統的な酒造りの科学的な意味を明らかにして、将来のさらに優れた技術の開発につなげたいと思い、日々研究を行っています。今後は修士課程へ進学して、高校の頃からの興味である「人に役立つ微生物」についてより深く勉強し、食品産業や微生物を利用した産業において研究開発に携わりたいと思っています。

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