東京農業大学

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東京農業大学の研究活動

オールインワン蛍光顕微鏡

これが相棒です!

第6回

 試料に紫外線などを照射し、試料が発する蛍光を観察するために使われる蛍光顕微鏡。試料を蛍光色素などで染色することで、特定の部位や細胞などを選択的に観察し、検査できる。北海道オホーツクキャンパスにある生物産業学部の相根義昌教授は、生きている細胞や組織の変化の観察など多機能な分析が可能なオールインワン蛍光顕微鏡を使って、食中毒の原因となる細菌毒素の構造と機能に関する研究を進めている。

 研究を始めるきっかけは、学部生時代の指導教官が、北海道でボツリヌス食中毒が発生した際に原因菌を特定し分離することに成功した北海道立衛生研究所出身の教授だったため。毒素がどのように体に侵入するのか興味を持ったという。

 毒素はタンパク質でできている。普通、タンパク質は口から消化管に入ると消化液で分解されアミノ酸などの小さな分子となってしまう。毒素のタンパク質も分解され、元々の機能はなくなってしまうはずだが、この毒素は分解されずに神経細胞に入り込み、食中毒を起こす。

 このシステムがまだよく分かっていない。本来は不安定なはずのタンパク質が体内に侵入する仕組みが明らかになれば、抗体やワクチンなど消化管内で不安定なタンパク質やペプチド製剤を効率的に体内に送り込むシステムに応用できるのではないかと考えられている。また、神経系の疾患に対する薬剤の送達システムに応用できる可能性もある。「毒素のような厄介物でも、生体に与える影響が細かく分かれば、それを逆に利用して薬のような使い方も可能になるはずです」と相根教授は語る。

 オールインワン蛍光顕微鏡が導入されたのは2020年1月。この顕微鏡により、毒素が細胞に与える影響を時間経過とともに連続的に記録することが可能になり、毒素が細胞のどこに、どのように侵入していくのかを明らかにすることができる。「これまで静止画でしか理解できなかったものを、動画で記録し、分析できるようになりました。この違いは大きいです」

 相根教授が所属する食香粧化学科は、天然素材が肌の細胞に与える影響を解析し、香りの成分が細胞に与える影響など、食品、香料、化粧品成分が生体に与える影響を明らかにする研究を進めている。「蛍光顕微鏡によって、細胞や生体内の組織がどのように変化したかを可視化でき、鮮烈に印象付けることができる。学生の好奇心や理解度を高め、研究に導くきっかけになっています」と教育上の効果も大きいことを強調する。

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