東京農業大学

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東京農業大学の研究活動

高分子解析装置

これが相棒です!

第3回

 農芸化学という学問分野がある。一般には少し耳慣れない言葉だが、英語名の Agricultural chemistryの通り、化学を応用して生命・食・環境に関して幅広く研究する農学の一分野だ。東京農業大学応用生物科学部農芸化学科は、ビタミンB1を発見した鈴木梅太郎博士が1913年に東京農大教授に就任したことがきっかけで設立され、私大の農芸化学科としては最も古い歴史を持つ。

 広い研究領域の中で食料資源理化学研究室は、食品製造の原理やおいしさを分子の視点で解明する研究をしている。いわば「おいしさを科学する」研究室。
 「そこで、ヨーグルトやチーズなどの乳製品のおいしさに関わる食感を大きく左右する乳タンパク質の凝固、カゼインミセルの構造特性を研究しています」と語るのは岡大貴助教。「分かっていないことばかりなんですよ」という。

 例えば、ヨーグルトの原料となる生乳は加熱殺菌されるが、低温加熱では凝固しない。逆にチーズの原料となる生乳は高温加熱すると凝固しない。「古くからの経験の積み重ねで分かっているだけで、なぜそうなるのかは化学的には解明されていないのです」

 食品に関する多くの「なぜ」を解消するため、2019年春に購入したのが、高分子解析装置。4500万円以上と高額なため、岡助教が提案してから3年がかりで実現した。動植物のタンパク質や糖などの高分子化合物の構造特性や機能を解析する機器で、導入したシステムは、分子の固まりである高分子化合物を自然のまま分離することが可能で、そのままの状態でサイズ、結合形態、電荷などの性状を解析できるのが大きな特徴という。

 「食品はいわば混ざりもの。たくさんの材料を混ぜ、加熱したり、pHを変えたりして出来上がります。この装置を使えば、その時々の状態が分子レベルでどうなっているのかを見ることができるのです」

 本来は医薬系の研究機関で使われる機器のため、農学系の分野での利用は少なく、特に食品の研究に用いているのは、全国で東京農大のみだという。

 ヨーグルトは生乳に乳酸菌、チーズはレンネット(酵素)を入れて凝固させる。豆腐も大豆タンパク質にニガリ(マグネシウム、カルシウム)を入れて凝固させる。「凝固する変化を分子レベルで解明できれば、何も使わずに凝固させて、ヨーグルトやチーズ、豆腐が、いや、全く新しい食べ物ができるかもしれませんよ」。岡助教は笑顔で語った。

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