東京農業大学

メニュー

ニュースリリース

共同研究「魚油や亜麻仁油に含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸が痛みに効く分子メカニズムを解明~慢性痛の新規医薬品の開発に期待~」|食品安全健康学科 岩槻 健教授

2022年7月20日

教育・学術

 岡山大学自然生命科学研究支援センター ゲノム・プロテオーム解析部門、大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)膜輸送分子生物学分野の宮地孝明研究教授、加藤百合特任助教(現:九州大学薬学研究院助教)、原田結加特任助教、東京農業大学応用生物科学部食品安全健康学科 岩槻健教授らの研究グループは、魚油や亜麻仁油などに含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)が小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)を阻害することで、神経障害性や炎症性疼痛を予防・改善できることをモデル動物で見出しました。
 EPAが神経障害性や炎症性疼痛に有効であることはこれまで報告されていましたが、その分子メカニズムはよくわかっていませんでした。本研究により、必須栄養素のEPAが慢性疼痛を予防・改善する分子メカニズムを解明できました。本研究成果は、日本時間2022年7月19日に米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載されます。今後、神経障害性や炎症性疼痛を予防・治療できる医薬品や健康食品の開発が期待されます。EPAは医薬品として利用されていますので、適応拡大(ドラッグリポジショニング)に向けた臨床試験への展開なども期待できます。

用語説明

  • *1 オメガ 3 系多価不飽和脂肪酸
    多価不飽和脂肪酸は二重結合の位置でオメガ 3 とオメガ 6 系に分類され、複数の二重結合を分子内に持つ。オメガ 3 系は動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げる他、中性脂肪を減らすなど、様々な作用が知られる。体内で合成できないため、一部は必須脂肪酸と呼ばれる。
  • *2 エイコサペンタエン酸(EPA: Eicosapentaenoic acid )
    オメガ 3 系多価不飽和脂肪酸の代表例の一つ。エステル体であるエイコサペンタエン酸エチルエステル(プロドラッグ)の適応は、閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善、高脂血症であり、血清脂質低下作用、抗血小板作用、動脈の進展性保持作用が報告されている。
  • *3 小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT: Vesicular nucleotide transporter)
    トランスポーター(輸送体)は生体膜を貫通しているタンパク質のうち、物質の輸送を担うタンパク質の総称である。このうち、VNUT は分泌小胞の ATP 濃縮を司っており、プリン作動性化学伝達の必須因子の一つである。分泌小胞に充填された ATP は、さまざまな刺激によって開口放出され、プリン受容体に結合し、シグナルが伝達される。

ページの先頭へ

受験生の方