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ニュースリリース

共同研究「世界初!免疫機能を付与したミニ腸の開発に成功 炎症性腸疾患治療の開発、腸管免疫や腸内細菌分野への応用にも期待」|食品安全健康学科 岩槻 健教授

2022年7月1日

教育・学術

 国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)研究所 再生医療センターの阿久津英憲部長、東京農業大学食品安全健康学科の岩槻健教授、弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座の袴田健一教授らの研究グループは、腸管の免疫機能 を有する高機能化した「ミニ腸」の開発に世界で初めて成功しました。ヒト iPS 細胞由来の腸管立体臓器「ミニ腸」1 に組織マクロファージ2を生着させ、生体小腸組織マクロファージとの特性および機能性について検証しました。その結果、ミニ腸内の組織マクロファージは、ヒト小腸組織内のマクロファージがもつ特徴的なタンパク質の発現パターンを示し、大腸 菌成分を貪食する機能も有することが認められました。
 異物や病原体を認識し、排除する仕組みである自然免疫は、腸管においても大変重要な役割を担っています。病原体を認識・貪食し活性化したマクロファージは、様々なサイトカイ ン 3を分泌し他の免疫細胞を活性化します。このような自然免疫応答は腸管の恒常性維持に 必須であり、私たちの健康維持にも大事な機能です。クローン病と潰瘍性大腸炎などの炎症 性腸疾患(inflammatory bowel diseases:IBD)では、腸管の自然免疫応答の乱れが発症 に関係しているとされています。
 本研究の成果は、米国消化器病学会の学会誌「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology (CMGH)」にオンライン掲載されました。

研究成果のポイント

  • ヒト iPS 細胞から創生した機能性の立体臓器「ミニ腸」にマクロファージを内在化 させることに成功した。
  • 炎症性サイトカインの分泌や大腸菌成分の貪食機能も有していた。
  • 腸オルガノイドで免疫系細胞を有するものは報告がなく、試験管内で自然免疫応答 を評価できるミニ腸は世界初の成果である。
  • 1 ミニ腸:国立成育医療研究センターの阿久津英憲部長らが 2017 年に開発した、ヒト ES 細胞や iPS 細 胞より創生した小腸の立体臓器モデル。栄養吸収をおこなう粘膜上皮および粘膜下組織、その外側に筋肉 や独立した神経系があり、ペプチドホルモンなどを分泌しつつ、自律的に制御、調和しながら動いてい る。小腸の立体臓器モデルは、他の研究グループでも開発されているが、腸上皮が外側に配向していて、 液体培地で培養できるのは、今回用いたミニ腸の大きな特徴である。
  • 2 マクロファージ:白血球に分類される免疫細胞のひとつ。体内に侵入した細菌などの異物を食べる能力 に優れており、食べた細菌を消化・殺菌することで、細菌感染を防いでいる。
  • 3 サイトカイン:細胞同士の情報を伝達し、免疫細胞を活性化させたり抑制したりするはたらきを持ち、 免疫機能のバランスを保つための重要な役割を担っている。

論文情報

タイトル: Development of human gut organoids with resident tissue macrophages as a
model of intestinal immune responses.
著者: Satoru Tsuruta, Tomoyuki Kawasaki, Masakazu Machida, Ken Iwatsuki, Akihiko
Inaba, Shinsuke Shibata, Tomoko Shindo, Kazuhiko Nakabayashi, Kenichi Hakamada,
Akihiro Umezawa, Hidenori Akutsu*
掲載雑誌:Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jcmgh.2022.06.006

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