東京農業大学

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ニュースリリース

東京農業大学長 新年のご挨拶

2021年1月1日

お知らせ

130年を祝いましょう

東京農業大学学長

髙野 克己

 新年あけましておめでとうございます。
 コロナ禍の重苦しい霧が晴れぬまま迎えた新年ですが、2021年は東京農業大学にとって特別な年です。東京農業大学は1891(明治24)年に徳川育英会を母体として設立された私立育英黌農業科を源としており、本年は創立130周年の記念の年にあたります。「農業」を冠した最も歴史と伝統ある大学であることを、改めて心に留めたいと思います。

 さて、2020年を振り返りますと、まさに疾風怒濤の1年であったとの思いを強くします。
2019年末、中国・武漢で初めて感染が確認された新型コロナウイルスは、わずか3カ月で世界に拡大し、世界保健機関(WHO)は3月11日、「パンデミック(世界的な感染拡大)」を宣言しました。国内でも感染拡大の危険性が高まり、本学も卒業式と入学式を共に中止する苦渋の判断を下しました。さらに4月7日、政府の緊急事態宣言が発令されたことを受け、4月10日から世田谷、厚木、北海道オホーツク、3キャンパスの閉鎖に踏み切り、教職員は在宅勤務の体制に入りました。授業開始は1カ月以上遅れ、5月11日から始まりました。前学期中はすべてインターネット利用の遠隔授業で、9月からの後学期は、厳重な感染対策を実施しながら、実験・演習などで対面授業を始めましたが、講義科目は原則、遠隔授業を継続しています。
 いずれも本学が初めて体験することばかりでした。学生、教職員が一丸となって取り組みました。特に遠隔授業に関しては、授業の質を落とさず、さらに学生との双方向性を確保するために、それぞれの教員が工夫を重ね、学生のみなさんもそれに応えてくれました。当初、多少の混乱も発生しましたが、対面と遠隔を組み合わせたハイブリッド型授業は、スムーズに実施できていると考えています。

 しかしながら、この間、学生のみなさんには強い忍耐を強いました。キャンパスに入れず、サークル活動もできず、本来のキャンパスライフとはかけ離れた毎日でした。特に1年生のみなさんは、一度もキャンパスに入れないまま、遠隔授業が続き、人間関係も築けず不安を募らせていたことと思います。
 そうした状況下で、なぜ大学だけ授業を再開しないのか、なぜ授業料、施設整備費などが減額されないのかと疑問を持った学生、保護者の方も少なくなかったと思います。
 確認しておきたいのは、昨年1年間、本学が直面したさまざまな課題は、本学のみの課題ではなかったということです。日本のすべての大学、さらに世界の大学が初めて直面する課題でした。クラスター(集団感染)を発生させずに、いかに大学のあるべき教育研究を継続するかという重い課題です。
 幸い日本では大規模な発生例はありませんが、アメリカでは対面授業の再開を急ぎ、1000人以上の感染者が発生した大学もあります。授業以外も研究室、サークルなどでの他者との交流を通じて主体的に学ぶことが求められる大学生は、高校生までのように、その行動を一律に管理することは困難です。対面授業の再開は、確実に他者との接触機会を増やし、感染の可能性を高めます。慎重にならざるを得ませんでした。
 また、本学のような私立大学は、授業料などの学生納付金により、教職員を雇用し、校地、校舎などの施設設備、その他教育上に必要な人的・物的資源を確保し、運営されています。授業料は一つ一つの授業の履修を単位として積み上げたものではありません。学位授与のための総合的な教育環境を提供するための経費であることをご理解ください。施設整備費も単なる施設利用料ではなく、長期的計画に基づく施設整備のための投資資金に充てられています。授業料と同様に減額・返金の対象となるものではありません。
 以上、ご理解賜りますよう重ねてお願い申し上げます。

 さて、コロナ後の世界はどうなるでしょうか。
 国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しで、成長鈍化による経済損失は2020年からの6年間で28兆ドル(約3000兆円)と試算しています。見当もつかない金額ですが、世界経済がコロナ禍前の水準に回復するには長期を要することは間違いありません。

コ ロナ禍で何が起きたかを振り返りましょう。すぐに、地球規模での人と物の交流が滞り、世界的分業体制は崩れました。見逃せないのは、早い段階で、食糧囲い込みのため農産物・食品の輸出規制に動く国が相次いだことです。

 世界の成長の基盤となっていたグローバル化の限界点が示されたのです。

 30年後の2050年、世界の人口は20億人増加し、97億人になると予測されています。現在でも8億2000万人が飢餓に直面していると言われており、世界的な食糧増産が急務です。また、「50年に1度」の大雨が毎年のように降り、甚大な被害が各地で発生しています。地球が悲鳴をあげているのです。環境汚染、経済格差の拡大もあります。
 その上にコロナ禍が加わりました。
 2020年のノーベル平和賞は、世界で食糧支援を続ける国連世界食糧計画(WFP)が選ばれました。コロナ禍で飢餓が広がる恐れを反映した選考です。
 食糧危機は地域の安定や住民の安全に直結する問題です。どの国も一国では解決できません。コロナ禍の影響が長引けば、世界の飢えは拡大するからです。
 「生きる」ことが脅かされているのです。
 そして30年後、日本の人口は約25%減少し9500万人台となる予測です。
 日本の食料自給率は38%しかありません(2019年度、カロリーベース)。
 その時、いのちを支える「食」と「農」は誰が担うのでしょうか。

 東京農業大学3キャンパスの6学部23学科に在籍する約1万3000人の学生が取り組んでいるのが、「生きる」を支える学びです。東京農業大学は130年間、それぞれの時代の要請に応え、「生きる」を支える学びを積み重ねてきました。学生たちは、生命、食料、健康、環境、資源、地域、グローバルのそれぞれの課題を農・理・工・経の専門領域を通じて、「食」と「農」を考え、「生きる」を支える学びを続けています。他大学にはない本学の学びの大きな特徴です。

 コロナの後の将来予測は困難です。しかし、「食」と「農」が日本、そして地球の未来をひらくキーワードであることは間違いありません。本学で学んだ学生が、それぞれの立場でこれからの社会に大きく貢献していくことを強く確信しています。

 コロナ禍で迎えた130周年です。さまざまな制約があるかと思いますが、卒業生、保護者のみなさま方、学生のみなさんと共に、声高らかに祝いたいと思います。
 また、125周年記念事業としてのシンボルとして、かねてから計画していた「国際センター(仮称)」を世田谷キャンパス正門横に建設を開始します。本学の国際交流・情報発信の拠点となる施設で、留学生や海外からの来客の受け入れ窓口となるほか、世界のさまざまなフィールドで活動する教員学生の情報を発信します。建学の精神である「人物を畑に還す」を「人物を世界に還す」に発展させ、世界の「食」と「農」に貢献していきます。

 最後になりましたが、本年も変わらぬご支援、ご協力を賜りますとともに、みなさま方のご健康とご多幸をお祈り申し上げ、新年の挨拶といたします。

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