東京農業大学

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進化する東京農大

平成31(2019)年度 入学式式辞

新入生の皆さん、入学おめでとう。
そして、皆さんの入学にあたりご支援をくださったご家族をはじめ、ご関係者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
本日は、皆さんの入学を祝うため、海外協定校であるカンボジア王立農業大学のブンタン・ンゴ学長、学校法人東京農業大学から大澤貫寿理事長、明治大正期の30年間、本学の経営を支えた公益社団法人大日本農会から吉田岳志会長、在校生のご家族を代表して教育後援会小林正樹会長をはじめとする多数の方に登壇いただいております。ご多用のところ誠にありがとうございます。

東京農大は、ここ東京世田谷区のほか、神奈川県厚木市、北海道網走市の3キャンパスに、学部生・大学院生1万3千人、教員400人、職員300人からなる世界でも類を見ない農・生命科学系総合大学に進化しています。
東京農業大学は明治24(1891)年に明治期きっての国際人、科学者でもあり、日本を近代国家へと導いた榎本武揚公により創設され、今年で創立128年を迎える伝統ある大学です。
榎本公は、徳川幕府から留学生としてオランダへ派遣され、産業革命後の先進ヨーロッパ諸国の国力、科学技術を目にし、驚きと共に多くの知識を吸収しました。そして新生日本の産業発展には先進的科学技術、特に国民の衣食住を生産する「農業」の発展こそが近代国家の建設に極めて重要であるとの思いから、本学を創設しました。
榎本公は自らの留学体験から、学習した知識は現場で生かす経験によって実を結ぶこと、また時に知識と現実の違いを理解し、その解決策を探ることが重要であるとの信念のもと、当時主体であった教室での教授のみの限界を痛感し、講義だけでなく実験や実習を多く取り入れ、さらにその成果をもとに、農家支援などインプットからアウトカムの一貫した教育の中心としました。
この教育研究の精神を継承し発展させたのが、近代農学の祖である初代学長の横井時敬先生です。本学の教育研究の理念「実学主義」は、横井先生の言葉「稲のことは稲にきけ、農業のことは農民にきけ」に込められています。
つまり、机上の理論ではなく、その物、現場で自らの感性を駆使して、課題を発見し、その課題がなぜ起きているのかを自ら考え、科学的に実証することで課題解決に導いていくと言うことです。

本学の教育研究は、榎本・横井精神を受け継ぎ、教室、研究室そしてフィールドを主体としており、3年生からは全学生が研究室に所属します。講義や実験実習で専門的知識を学ぶことはできますが、それに加えて幅広く教養を持ち、専門と専門とをつなげられる想像力と柔軟さを備えることが大切です。SNSの普及やAI等の日進月歩の技術文化の発展により、コミュニケーションの方法は多様化していますが、研究室は学生と教職員がフェイスtoフェイスで共に過ごす場であり、皆さんを社会人へと成長させる場です。そこには、同輩、先輩、後輩、様々な国の学生が集まりファミリーが形成されます。まったく違う知識や考えを持った人とも対話できることが大切です。研究室のみならず、課外活動の場または卒業生や地域の皆さまとコミュニケーションをはかり、有意義に過ごしてください。
研究室のなかでも大学院生はリーダーとしての活躍を期待します。急速な世の中の進化に、より高度な専門性が社会から求められています。指導教員のもと自ら研鑽を重ねることはもちろんのこと、後輩への指導により成長してほしいと願います。
近年の地球規模での気候変動による環境の変化や自然災害の増加、人口増加による食料危機など、地球とそこに生きる多様な生き物、人類の生存を脅かす課題に直面しています。これら課題解決ため「農」を基盤とする生命、食料、環境、健康、エネルギー、地域創成などの幅広い研究領域をカバーする東京農大に大きな期待が寄せられています。東京農大生の使命は、「人類の幸せのため、倫理観をもって、地球に貢献すること」です。人や動植物を含めたすべての地球の「生きる」を支えることです。この大きな使命に立ち向かい、努力してください。

本日は新入生の皆さんに、教育後援会からお祝いとして「箸」を用意してもらいました。この箸は、東京農大の学びを通じて、皆さんが社会に役立つ人材となり、経済的に独立することを願うもので、本学と連携協定を結んでいる長野県木祖村のヒノキ材を使用したものです。皆でおそろいの農大オリジナル箸を使い、多くの仲間を増やしてほしいと願っています。
全国的に有名な農大名物「青山ほとり」通称「大根踊り」では、その歌詞に『人間喰わずに生きらりょか』とあり、「生命(いのち)」を大切にすることが歌い継がれています。「食」の大切さ、いのちの尊さ、ありがたさを噛みしめながら、箸を使い、心身ともに健康に過ごしてください。

東京農大では、長野県木祖村を含める46自治体、29企業、JA7団体、研究機関等合わせると100にもおよぶ連携協定を結び、地域・産業界に貢献すると共に、海外ではカンボジア王立農業大学を含めた世界28カ国39校との協定を結び、学生の教育研究フィールドを広げています。
現代では「ここまで」という限界も、区切りもなくなっています。皆さんは自分の限界を超えて、知識の限界を超えて、どのような未来像を描き努力していくのか。東京農大生としてひたむきに「生きる」を追求していくことで夢を実現させてほしいと願います。本日この場にいる皆さんは、これまでよりさらに多くの人と出会うチャンスを手にしています。このことが人生においてどれほど貴重なことか想像してみてください。また将来の夢、家族や仲間の笑顔を想像してみてください。大いに「実学主義」を実践して、他者を思いやる「農のこころ」を持ち、想像力豊かにキャンパスライフを楽しんでください。

本日入学された皆さんが在学中の2021年に、東京農大は創立130周年を迎えます。今年後期授業開始時には厚木キャンパスの新実験実習棟が、2020年4月には世田谷キャンパスの新研究棟が、それぞれ完成し、東京農大の歴史に新たなページが加わります。
本学の建学の精神は、「人物を畑に還す」です。世界の各地域のリーダーとなるため、この精神のもと、一緒に新たな歴史を作っていきましょう。
これからの皆さんの活躍と努力に期待して、式辞といたします。

平成31(2019)年4月2日

東京農業大学長
農学博士 髙野 克己

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