東京農業大学

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教員コラム

イタリアレシピでオホーツクを発信 ペンション「わにの家」

2017年6月1日

名誉教授 美土路 知之

オホーツクの地域資源 Foods Who(16)

 オホーツク海や網走周辺を一望できる天都山(てんとさん)の山裾、網走湖にほど近い森の中にひっそりとたたずむペンション「わにの家」がある。隠れ家的なロケーションは、まさにオホーツクグルメの秘密倶楽部だ。レストランでは、地元網走で水揚げされた魚介類と地元野菜、パンやパスタには地場小麦粉が使われたイタリアンレシピでもてなしてくれる。
 オーナーシェフの須藤龍司氏(通称わにさん)は、学生の頃からの旅行好き。訪れた先々の料理や食材に強い興味関心をもって各地を行脚したという。それが高じて1983年に網走でペンションを開業。いまではリピーター客も含め全国からわにさんのメニューを楽しみにした来客が絶えない。七つの客室に14名で満員札止めとなる小ささだが、アットホームで美味のオホーツク食材が何よりの魅力となっている。団体が大挙して殺到する喧噪よりも、ひっそりとした環境で思い切り料理や素材を楽しみ、ゆったりとした時間の流れに身を委ねるぜいたくは何にも替えがたい。
 心を込めて調理し、サービングされるメニューはまさにスローフード・スタイルである。オーガニックでストレスのない旬の地元素材と、手間ヒマをかけてこしらえられた絶品料理は、見て、味わって心豊かなひとときを楽しませてくれる。
 しかも、春夏秋冬を通じてその時季でなければの良質この上ない食材はもとより、この地でなければ、そしてこの人でなければが一体となった味わいが秀逸さを増す。さらに、澄んだ空気と清澄な水がどこよりも秀でているため、それらの相乗効果も大きい。
 あたかもスローフードの提唱者、カルロ・ペトリーニが唱えた「美味しい、きれい、正しい」が体現されているようだ。地元の旬素材を「地消」するから、ハウス栽培や長距離輸送のような環境負荷を最少にし、生産者に対しては「買い叩く」ことなくフェアな取引が行われる点が「きれい」と「正しい」ことを表している。
 それ以上に、わにさんのウデと心意気も評価したい。地産「来消」のツーリズムとして、毎回心暖まるサービスと交流を提供してくれるオーナーシェフ夫妻の存在が味に感銘を添えているのである。
 最近の旬メニューから秀逸なものを紹介すると、流氷が去ったあとの海明け直後のウマ味増すウニを絡めたウニパスタ、春告魚とも呼ばれるニシンを軽くマリネにした前菜や、カニやホタテの魚介のグリルなど、春メニューが楽しめる。初夏になれば、アスパラをはじめとした露地ものの春野菜や山菜が出回るし、オホーツクサーモン(サクラマス)や時サケもよい。秋口にかけてはさらに豊富な種類の食材が揃う。畜肉では、ホエーブタや地元産の和牛や平飼いの鳥や鶏卵などもある。どれもみな健康に育て上げられて味わい深いものばかりである。百聞は一見にしかず。一度、実食されてみてはいかがか。

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