東京農業大学

メニュー

教員コラム

西洋わさびの高付加価値化に取り組む

2017年3月1日

生物産業学部地域産業経営学科 准教授 上田 智久

オホーツクの地域資源 Foods Who(13)

未利用資源を活用した金印わさび

 本わさびは、現在でも購入するとなれば1本2000円前後するため、庶民にとっては高嶺の花である。しかし現在では、安価なチューブわさびが出回るようになり、誰もが口にできる商品として大衆化した。そして、このようなチューブわさびを製造するためには、西洋わさびが必要となる。西洋わさびを原材料とする「わさび市場の創造」に尽力した企業が金印わさび株式会社(以下、金印)である。金印は、名古屋に本社があり、「わさび市場の創造」に貢献したのはもちろんこと、オホーツク地域の活性化にも重要な役割を果たしていることから興味深い企業と言える。
 西洋わさびは、本わさびに比べると安価なため、金印はまず西洋わさびを用いた「粉わさび」の製造を行った。西洋わさびは、明治初期にアメリカから日本へと持ち込まれたものである。そして日本に伝来した後、北海道で栽培が行われるようになったと言われている。この西洋わさびは生命力が強いため増殖していったこともあり、農家からは雑草と同じく厄介者として扱われていた。西洋わさびの価値が認知されるまで、オホーツクでの利用法としては、「山ワサビ」と称し醤油漬けにして食べるほかなかったのである。
 この未利用資源として扱われていたオホーツクの西洋わさびに着目するだけでなく、地元農家に西洋わさびを初めて栽培させるまで漕ぎ着けたのが金印である。1965年に西洋わさびの契約栽培主産地を長野から北海道に移転し、その後もオホーツクの地に乾燥工場を建設(1968年)している。


新たな雇用の創出

 オホーツクは11月中旬以降になると雪が降り始めるため、農作業を行うことが難しい。そこで金印は、オホーツクに乾燥工場を設立した後、次年度の収穫期までに必要な西洋わさびをオホーツク工場にストックしている。当時、収穫後の西洋わさびの管理は非常に難しく、寒冷地であるオホーツクであっても、単に山積みするだけでは腐敗してしまう危険性があった。そこで、常に空気が通るよう西洋わさびを積み、雪を利用して腐敗することのないよう、西洋わさびの品質を保持しなければならない。こうした作業が網走において必要になったことにより、新雇用がオホーツクの地に生み出されたのである。当時は冬になると、多くの農家が出稼ぎのために離網しなければならなかった。しかしながら、わずかではあるものの金印は、新雇用を創出したのである。
 金印は、オホーツクの地で厄介者として扱われていた西洋わさびを有効に利用するだけでなく、雇用をも生み出したことで、オホーツク地域に多大な貢献をもたらした企業といえる。そして現在でもオホーツク地域では西洋わさびの栽培が盛んに行われ、オホーツクの地から、日本食に欠かすことのできない「加工わさび」が製造されているのである。

ページの先頭へ