東京農業大学

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教員コラム

にゅう乳

2014年3月1日

生物産業学部食品香粧学科 教授 永島 俊夫

オホーツク新食品誕生記(23)

農大の加工技術 農大ブランドの製品

 古いことになりますが、私は農大の農芸化学科で学び、住江金之先生の農産製造学研究室(住研)に所属しました。種々の食品加工については同じ研究室の浅利喬泰先生の指導を受け、一時食品会社に勤務しましたが、農大に教員として採用されてからも特にジャム、マーマレード、酸乳飲料などについては製造の理論と技術を徹底的に仕込んでいただきました。ジャム類は、ペクチン、糖、酸の3成分が一定の割合になったときにゲル化する性質を利用したものです。そのためには加熱濃縮の程度、時間、砂糖投入の時期、アク取りや撹拌の仕方など、釜の状態を見ながら対応する判断力を身につけることが必要です。また、酸乳飲料については、乳酸菌の発酵によるものですが、微生物による発酵は大変微妙なもので、原料乳の処理やスターターの管理など、ともに理論ではない経験で身についたこともたくさんありました。
 オホーツクキャンパスで行われる収穫祭で、私の研究室では毎年ジャムと酸乳飲料を造って販売し、一般の市民の皆さんから好評をいただいてきました。平成9年度の収穫祭で学生が、この酸乳飲料を「にゅう乳」という名称で販売し、それを毎年継続してきたため、網走市内では「にゅう乳」という商品名が一般に通用するくらいにまで浸透しています。また、市販されている製品よりおいしいという評価もいただき、毎年これを買うことを第一の目的に来られる人たちもいます。収穫祭の「ジャム」と「にゅう乳」は、私の住研時代からの経験を生かした自信作です。
 オホーツクは食材の宝庫であり、そのような原料の生産現場が見えるところで加工ができるということは、研究の幅を広げることに役立ちます。当然、このことは学生への教育にも効果が高く、原料生産を理解した上で加工することにより、原料と加工の双方を意識した勉強ができます。これは都会の大学ではできない、この地域に立地しているからこそ可能なことで、食品加工はオホーツクキャンパスの大きな特徴となっています。その教育プログラムとして、前回紹介したように学部では「地域資源利用によるフードマイスター育成」を実施しており、生産から加工、流通、経営に至る食品関連の幅白い知識を身につけて製品開発を行い、さらに商品化までサポートする内容は高い教育効果をあげています。
 食品を製造する場合、工程に無駄なことはなく、それぞれに必ず意味があります。これらを正しく理解して作業をすることが必要であるとともに、常に工程の状態を把握し対応できる能力を身につけることが求められます。これまでの経験で、私には食品加工に関するたくさんの引き出しができました。それぞれいろいろな加工技術が入っています。いつかまた、それらの役立つときがあればいつでも引っ張り出したいと思っています。

 私は3月で定年退職を迎えますので、この連載も今回が最後となります。このような連載の機会を与えていただきました戦略室(当時の広報部)をはじめとする関係各位に感謝するとともに、毎回お読みいただきました皆様に厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。


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