東京農業大学

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教員コラム

オホーツクの被食・捕食関係の解明に向けて、氷の下の小さな生き物と格闘中。

2016年2月18日

生物産業学部 アクアバイオ学科 水圏生態学研究室 中川 至純 助教

厳寒期を迎えたオホーツクは結氷します。けれど、表面は氷に覆われても、その生態系が動きを止めることはありません。厚く冷たい氷の中や下では、アイスアルジーやプランクトンが活発に生き続けているのです。

オホーツクの氷の下の食糧事情

海の中にも食物連鎖は存在します。オホーツク海域の食物連鎖の頂点がトドやアザラシとするなら、その下にいるのが魚類で、魚類は動物プランクトンを、動物プランクトンは植物プランクトンを捕食します。

一般に、生物は体重の10倍の食料を必要とするといわれます。その言に従うなら、魚類10トンが生きていくには100トンの動物プランクトンが、植物プランクトンにいたっては1,000トンが必要ということになります。氷海の食物連鎖の底辺にいるのが植物プランクトンやアイスアルジー。オホーツク海域の漁場が豊かでいられるのは、氷の下で繁茂するアイスアルジーの恩恵と考えることができます。凍った海の下でアイスアルジーが繁茂していることや、それが生物生産に影響を与えていることは南極や北極の研究で明らかです。しかし、海水の形成と生物生産の関係などわからないことばかりです。

通常の海では冬になると冬眠状態に入る動物プランクトンがいます。食料となるアイスアルジーが豊富に氷の下にいて、動物プランクトンがそれを見逃すはずがないと考えています。

研究調査は試行錯誤の連続

オホーツク海域の被食・捕食の関係、ひいては食物連鎖の仕組みを明らかにしたいと思っています。そのための氷の下の動物プランクトン研究です。けれど、これがなかなか難しい。氷が溶けた後なら、海水をプランクトンネットで調べればいい。けれど、氷の下となると、そこに穴を空けてネットを曳くほかなく、それでは範囲が限られるし、海が凍るということは陸上の気温も当然氷点下、空中に揚げた途端に凍ってしまいます。でもあきらめるわけにはいきません。冬の時季だけ凍るオホーツク海は、凍りはじめて溶けてなくなるまでの生物の生態を比べることができる、めずらしい海です。そこには、1年を通して凍ったままの極地では収集しえ得ない、貴重な情報が潜んでいるかもしれません。試行錯誤しながらの調査は、まだまだ緒についたばかりです。

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能取湖で採集された動物プランクトン

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