東京農業大学

メニュー

教員コラム

無農薬カボチャの栽培から販売まで‐大地のMEGUMIが取り組む食育活動‐

2016年7月1日

生物産業学部地域産業経営学科 准教授 菅原 優

オホーツクの地域資源 Foods Who(7)

有機農産物を生産・販売する営農集団

 大学から車で20分ほど走った大空町に有機農産物を生産・販売する営農集団がある。有機栽培の勉強会や試験栽培をする農家のグループとして誕生し、1989年に減農薬減化学肥料栽培による農産物の生産・販売を行う任意組織「大地のMEGUMI」を立ち上げ、農業機械や堆肥製造施設の共同利用をする営農集団として発展、2009年に「株式会社 大地のMEGUMI」(代表取締役・福田英信氏)となった。現在の労働力構成は5人の経営主と従業員2人を中心に、農繁期には経営主の妻や東京農大生も臨時雇用している。
 活動理念として「見える農業」、「触れる農業」、「語り合える農業」を掲げ、運営方針は(1)最良の品質と安心、安全、信頼を提供すること、(2)自ら行動し、自己能力の向上に努めること、(3)夢と若さを保ち、創造と革新を忘れないこと──としている。
 栽培品目はカボチャ(くりりん、味平、えびす、こふき、月見、雪化粧など)を中心にバレイショ(きたあかり)やアスパラを栽培しており、2001年には構成員全員が有機JAS認証を取得している。カボチャを例にすると、土づくりは前年の秋に有機質肥料を80kg/10a、牛糞おがくず堆肥を3t/10a投入し、農地の物理的構造を保全する「省耕起」といった土壌管理法を採用するなど、健全な栽培環境の維持・改善に余念がない。もちろん病害虫防除は完全無農薬、雑草はロータリーカルチと呼ばれる機械での除草と手取り除草で対応している。また、カボチャの選別は、独自の追熟処理(キュアリング)と徹底した選別基準を設けることで取引先からの高い評価と信頼を得ている。こうなると次第に取引先や消費者からの有機農産物や特別栽培農産物のオーダーが増加してくるが、有機農業や特別栽培の技術講習会を実施して周辺農家と連携し、「大地のMEGUMI」が定める栽培基準で生産した特別栽培農産物をも出荷できる体制を構築している。近年は地域の加工業者と連携した加工食品の開発も手掛けており、農業の六次産業化としての取り組みも進めている。


食育事業と消費者交流の取り組み

 2007年から地元の女満別・東藻琴両小学校6年生の総合学習支援活動として、食育事業に取り組んでいる。小学生がカボチャの播種(直播栽培)・生育観察・収穫体験を通じて、農業に対する正しい理解と有機農業による食の安全・安心についての関心を高めることを目的として実施している。さらには、小学生が仮想株式会社を作って、自らが生産・収穫したカボチャを「輝農祭(きのうさい)」というイベントで販売し、食育事業の集大成に位置付けている。このイベントでは、「大地のMEGUMI」が生産した有機農産物の販売はもちろんのこと、地元生産者の農産物販売(軽トラ市)や農畜産加工品の販売・試食のほか、小中学生らの音楽ステージなどもあって、大勢の来場者でにぎわいを見せる。毎年、農繁期でもある10月中旬に開催されているが、企画・運営には地元の商工関係者や建設業者など地域の関係者が関わることでイベントが実施されている。「明日の農業を支える子どもたちへの贈り物」というキャッチコピーで実施している「輝農祭」は、住んでいる地域に対する自信と誇りを深める活動として、さらなる発展を願っている。


ページの先頭へ