東京農業大学

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教員コラム

魅力を“まるごと”発信する地域イベント‐市民と学生による連携プロジェクト‐

2016年6月1日

生物産業学部地域産業経営学科 准教授 菅原 優

オホーツクの地域資源 Foods Who(6)

持続可能な地域社会づくりを目指して

 世界の農業大国として知られるフランスには、「地方自然公園制度」という地域政策がある。人と自然が共存する地域で自然資源・文化・歴史遺産の保護と活用を通じて、地域住民が定住でき、観光客を呼び込むための仕組みや自然資源・文化・歴史遺産の保全管理を目的として持続可能な社会、経済開発を実現するという理念に基づいた農村振興政策でもある。オホーツクでは、こうしたフランスの「地方自然公園制度」に学びつつ、オホーツクの自然環境をいかして一次産業をはじめとしたさまざまな業種との連携によって、新たな地域振興策の提案や事業活動を行う団体として、2011年8月に一般社団法人オホーツク・テロワールが設立された。「テロワール(terroir)」はフランス語で、土壌・風土という意味があり、オホーツク・テロワールでは地域が持っている自然や景観、歴史・文化・伝統をいかした質の高い商品開発と情報発信を通じてオホーツク地域の地域振興につなげる活動が行われている。こうした活動の一つとして、「オホーツク・マルシェ」がある。イベントでの販売活動等を通じて、消費者にオホーツク地域の食や魅力などを伝える販売イベントであり、2013年から網走版「オホーツクまるごと市」が実施されている。


「まるごと市」の取り組み

 この「オホーツクまるごと市」を実施する運営主体として「オホーツクまるごと市」実行委員会が組織され、オホーツク・テロワールの会員をはじめ、地域おこしに関心ある市民や東京農大の学生が有志メンバーとして参画している。「オホーツクまるごと市」の出店者(約40団体)は、こだわりの食や加工品を販売する農業者や加工・販売業者だけはなく、木工製品やガラス工芸品等といったクラフト製品を製造・販売する事業者であり、実行委員会では「オホーツク地域にある価値あるものをまるごと集めて、作り手とお客さんが交流を深める場づくり、体験を通じた相互理解と楽しみの創出」をコンセプトにしている。学生が担ったのは、face bookを使った情報発信と当日来場者に配布するイベントパンフレットの作成のほか、イベント全体の企画検討などで、子連れ客でも楽しめる体験企画を検討した。実際にクラフト製品の体験ができる「まるごとキッズクラフト体験」や「ふれあい動物園」、オホーツクの景観をゆったり楽しめるカフェ「天空茶房」の企画なども実施した。パンフレット作成では、イベントのコンセプトや出店者情報を盛り込み、手軽さと見やすさを追求して来場者に出店者やイベントの魅力を伝えるところに配慮した。イベント当日には、ステージ企画の司会進行役のほか、カフェの運営、各種体験コーナーの運営を担った。また、閉会のフィナーレでは、出店者と来場者で環境に優しい生分解性の鳥の形の風船を飛ばすなど、出店者と来場者の交流を演出しながら、イベント全体を盛り上げた。
 学生にとって、こうしたイベントへの企画・運営への係わりは、地域の市民との交流を深め、オホーツク地域の自然資源や地域資源が持つ魅力を多くの人に伝え、地域活性化に貢献できる貴重な経験の場となっている。今年は、東京農大創設125周年記念を迎えることを契機として、10月に実施される「オホーツク収穫祭」では、新企画として「オホーツク農大マルシェ」が実施される。ここでも地域の市民と学生が連携し、収穫祭全体を盛り上げてくれることを期待している。




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